217号 (2023夏)


テーマ 「すべての命と共に生きる」

地球上のすべてのいのち
微生物、昆虫、植物、動物、そして人間。

「私」は自分で生きているのではなく、
つながっている周りのものすべてと共に
生かされている存在であることを、
改めて感じさせてくれる一冊となりました。

 

 

2023年7月24日発売

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読者の声

  巻頭対談

気づく、気づかせる指導の実践

スポーツからスポーツ道へ

 

大阪産業大学野球部監督 宮崎 正志
VS UK実践塾 宇城 憲治

 

  

本来あるべき教育とは、
大人が子供のやりやすいように整えることではなく、
自らが動き自らが変化していく、
そういった中から自立し責任ある心、
人を思いやる心が育っていく。
まさに教育現場が「気づかせる・気づく」場で
あるべきだと感じています。

高校の野球部コーチ、監督を長年務めたのち、2002年より大阪産業大学野球部コーチ・監督として20年以上学生指導にかかわってきた宮崎正志氏。
2004年、宇城憲治氏を師と仰いでからは、スポーツのあり方を根本的に見つめ直し、勝ち負けではなく、学生たちの成長、真の幸せ、生き方、そして何より社会に役立つ人材の育成に力を注いできた。また大学の体育会のあり方も含め、何のためにスポーツ(野球)をやるのか。その意味とは。今求められる真のスポーツのあり方を、宮崎監督の実践から具体的に語っていただいた。

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スポーツをスポーツ道に

宇城 本日はよろしくお願いします。宮崎監督にはすでに長年道塾や野球塾、教師塾に来ていただいていますが、今日はあらためて現状のスポーツのあり方について語り合えたらと思っています。

というのは今、日本は非常に大変な時期にきており、今までの延長線上では、先の希望が見えにくくなり、今後ますます困難な時代となると思うからです。そこでスポーツ、特に国民的スポーツと言われている野球がどのような役割を担えるのか。野球は、少年野球から、部活としての中学校、高校、大学とありますが、特に大学におけるあり方は、社会人となる一歩手前のところで、人間性構築の場としても、非常に大事な時期だと考えています。宮崎監督は高校そして大学の野球部を長年監督しておられ、監督の実践の場からの話は大いに参考になると思っています。

宮崎 よろしくお願いいたします。宇城先生とは、私が高校から大学に異動になった後の2004年に、スポーツビジョンの田村知則先生とのご縁で先生の江坂塾へ参加させていただいたのが最初でした。お会いしてご指導をいただいた時は目から鱗と言いますか、まったく知らない「気」の世界を目の当たりにし、その何とも言えない包み込まれるような空気感、経験したことのないスピード感の違いに大変驚いたことを覚えています。江坂塾は当初は少人数でしたが、徐々に様々なスポーツの指導者が増えていきました。

宇城 あの頃は、野球では個別に広島カープの緒方孝市君や巨人の小久保裕紀君、カージナルスの田口壮君などの現役のプロ野球選手に加え、数多くの選手を教えていた頃で、その延長線上で田村先生の江坂塾でも野球に特化して指導したところがありましたね。

当時一番思ったのが、一流、二流、三流というのはあるのだなということでした。一流の人はものの見方、捉え方が違うし、まず裏切らない。裏切るとはどういうことかというと、その学ぶ姿勢で分かるのです。たとえば「何日の何時に」と約束して、遅れてくる人間はだいたいだめですね。なかには「忘れていました」という人もいました。こういう人は人間として二流、三流だなと思います。社会人として失格ですよね。

小久保君などはいつも約束の30分前には来ていました。これは一流の条件ですね。時間に遅れるような人は、その場主義で必ず離れていきます。属に言えば恩義を忘れる人間で、そういう人はどういう世界でも大成していません。

緒方君は関西での試合、主に阪神戦でしたが、翌日試合があるにも関わらず夕方7時から9時まで武術的要素を取り入れた内面の稽古をみっちりやりましたね。田口君はメジャーで活躍していましたが、オフの時に私の家の近くの広場で、雪が降っているような時でも時間通りに来て、打つ、投げる、走るの実践をみっちりやりました。

一流のプロであるにも関わらず、その学ぶ姿勢には頭が下がりました。一般社会人であっても、このようにありたいですね。
学生の時の野球は、技術はもちろん、勝った負けた以上に社会に役立つような人間としての基本をしっかりつくるスポーツでなければならないと考えているわけです。

そういう意味で私は今のスポーツを「スポーツ道」にすることが大事であると思っています。スポーツというのは、ある限られたルールの中で、ある限られた時期にやるものですが、「道」というのは人生で永遠です。したがってスポーツを通して身体を通して人間の可能性に挑戦する、すなわち人間の潜在力を引き出す創意工夫をして、その培ったものを実際に試してみる場が「試合」というように考えたらいいかなと思っているのです。

何故スポーツか、それは「身体を使わない勉強」だけでは頭だけの知識になるからです。「身体を使うスポーツ」はその意味で大事だと考えます。さらにそのあり方として「スポーツ」を「スポーツ道」にするならば、今やっているスポーツがまさに人生にも活きてくると思いますね。

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●プロフィール

◎ みやざき  ただし
1960年生まれ。大阪府吹田市出身。
大阪府立吹田高等学校から中京大学体育学部体育学科。大学時代は三塁手として、昭和56年明治神宮大会に出場。
大学卒業後は大阪府立箕面東高等学校野球部監督、大阪府立渋谷高等学校野球部コーチ、大阪府立池田高等学校野球部監督を務め、その後平成2年から大阪産業大学附属高等学校で野球部監督を13年間務める。高校での指導を経て、平成15年から大阪産業大学硬式野球部コーチに就任。平成22年から大阪産業大学硬式野球部監督を務める。
現在、大阪産業大学・キャリアセンター(就職支援課・体育会クラブ学生担当)に所属。


◎ うしろ けんじ
1949年、宮崎県生まれ。
エレクトロニクス分野の技術者、経営者として活躍する一方で武道修行を積み、文武両道の生き様と、武術の究極「気」による指導で、人々に潜在能力を気づかせる活動を展開中。「気」によって体験する不可能が可能となる体験は、目に見えないものを信じられない人にも気づきを与えるとともに、人間本来の自信と謙虚さを取り戻すきっかけとなっている。
空手塾、道塾、教師塾、野球塾、企業・学校講演などで「気づく・気づかせる」指導を展開中。
㈱UK実践塾 代表取締役
創心館空手道 範士九段
全剣連居合道 教士七段
宇城塾総本部道場 創心館館長

  ロングインタビュー

森に生かされて
Evolve with the Forest 「共生進化」

 

森の哲人・オークヴィレッジ創設者 稲本 正

 

道217号 稲本正 道217号 稲本正 道217号 稲本正

物事を始める時に、まず大局を見て調べて
決まったら何が何でもやり抜く。
常に原理原則を決めてから始めるやり方でした。
森と人との関係を通じて
人生のあり方を最後まで追求するという信念は
一度も変わっていません。


大学では物理学を学び、卒業後も大学に残り原発の安全性の研究を続けていた稲本正氏。しかし次第に安全性に疑問を持つようになり、シュレディンガーの『生命とは何か』を読んで、「植物がなければ人間は生きられない」ことを悟り、森に移り住むようになる。自然の中で仲間たちと起業した工芸村「オークヴィレッジ」は来年50周年を迎える。

日本の森を巡ったあとは、約10年かけて世界中の森を歩き、世界の森の素晴らしさと共に、止まらない森林破壊の現状も伝えてきた。現在、稲本氏は、森と人との共生の実現のために里山保全や植林などの環境活動に力をそそぐ。

動物の生命にとり、なくてはならない自然や森の姿を伝え続ける稲本氏に、人と森、教育、自然の中の子育てについて語っていただいた。

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医者だけはやめよう

―― 本日はお忙しい中お時間をありがとうございます。今号では野中ともよさんにも会見でご登場いただくのですが、野中さんと古くからお知り合いと伺いとても嬉しく思いました。

稲本 野中さんで思い出すのは、富良野で行なわれたNHKのBS(衛星報送)のオープニングの生番組で、野中さんが総合司会でした。私が出演する直前に中継が切れてしまって緊張が走ったのですが、野中さんが「はい! カメラを私に回して。稲本さんはそのままスタンバイ!」と、数十秒のことでしたが、その対応に「うまいなあ」と感心したのを覚えています。

それと当時僕が書いた『緑の生活』を元にした「故郷はみどり」という連続テレビドラマがNHKで放送されたのですが、その時のディレクターが野中さんのお兄さんでした。その頃から親しくお付き合いいただいています。

―― 稲本さんは約50年前に岐阜県高山に自然と人の暮らしの調和を求めて工芸村「オークヴィレッジ」を設立され、その後も植林活動や里山復活など環境保護活動をしておられますが、稲本さんの今に至る道のりについてまずお伺いできますでしょうか。

稲本 僕はもともと原子物理をやっていたのですが、たいてい原子物理をやると植物は離れたものだと思ってしまうのですが、僕は森とか緑、植物と人間の関係を通して、自然や宇宙の基本に植物が大切だと分かったのです。

親父が医者だったので「医者になれ」と言われていましたが、僕は小学校5年生で医者だけはやめようと思ったんです(笑)。

なぜかと言うと、僕が母のお腹の中にいる時に親父は軍医として出征し、捕虜としてシベリアに抑留され、僕が小学校に入る前に帰ってきた。帰ると仲間の捕虜の多くを助けられずに死なせてしまったというトラウマみたいなものがあって、もう家をほったらかしにしてやたら働くわけだ。当時車もなくオートバイになるまで馬で往診していた。そんな親父と僕は小学校からずっと飯を一緒に食ったことがない。

そんな働きづめの親父を見ていたので「医者だけはやめよう」と思ったのです。
その親父が最後に言ったのは「今の医学はだめだ!」と。なぜか。それは「予防を考えずに対症療法ばかりしているからだ」と。「医者の中には病人はお客様だと思うのもいるが、病気になる前に病気にならないようにするのが重要だ」と言っていました。

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道217号 稲本正

 

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●プロフィール

いなもと ただし
1945年 富山県生まれ。 立教大学理学部物理科卒、その後物理科に勤務。
74年 高山市に移住し、木工業を起業して75年オークヴィレッジを設立。
87年環境総合プロデュース会社オークハーツ設立。
94年『森の形 森の仕事』で毎日出版文化賞受賞。
『森の惑星プロジェクト』開始。
トヨタ白川郷自然學校設立校長。東京農大客員教授。岐阜県教育委員を17年務める。
著書に、『緑の生活』(角川書店)、『森の惑星』『日本の森から生まれたアロマ』『森の旅 森の人』(世界文化社)、『脳と森から学ぶ日本の未来』(WAVE出版)など多数。

  ロングインタビュー

「いのちのメモリ」を取り戻そう

私たちは自然の懐で生かされている

 

NPO法人ガイア・イニシアティブ代表 野中 ともよ

 

  

本来、畏敬の念を持たなければならないのだと思います。
自然というこの大きな力そのものに。
私たちは「生かされている存在」でしかないのですから。
それが野中の言う「いのちのメモリ」の感覚です。
これなしにどんなにたくさんの「お金のメモリ」で
CO2のトレードオフをしようが、
問題の解決には1ミリにもならないのです。

長年、TVキャスター、ジャーナリストとしてスポーツから国際政治まで幅広く活躍するのみでなく、企業の社外取締役や三洋電機の会長など、ビジネス分野においても活躍されてきた野中ともよさん。
現在はガイア・イニシアティブ代表として地球環境問題の解決に向け、すべての価値軸を「いのちのメモリ」でとらえる大切さを伝え続けている。
常に「傍を楽に」を信条に活動する野中さんの、原動力となったご両親のことや、今注力している、未来を見据えた活動などについて伺った。

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人はつながっている

―― 今号では野中さんと長年交流のある稲本正さんにもお話を伺いました。キャスター時代の野中さんのことを話しておられました。

野中 まあ、そうでしたか。稲本さんと初めてお会いしたのはNHK?BSの開局記念番組でした。北海道の富良野塾から倉本聰さんと共に、安倍譲二さんや宇崎竜童さん、阿木煬子さんといったあらゆる分野の方をお招きして、生中継で一週間ぶっ続けでやるというNHK的には初めてのチャレンジでした。

―― 中継が切れて大変だったそうで。

野中 そうでしたか。それは覚えていません。生番組ではそういうことはいつものことでしたから(笑)。
その時ちょうど長女がお腹にいたのですが、普通妊婦はメインには使わないそうですが、「新しい命を生み出すのだから」ということで実現しました。

お会いする数年前に稲本さんを主人公にしたNHKドラマが放送されたのですが、私の兄がたまたまそのディレクターだったこともその時判明し、ご縁に大盛り上がり。自然の中で子育てしたいという話から、山の別荘の設計をお願いしたり、オークヴィレッジ初の積み木作りには、どの樹種の木をよくかじるかとか、生まれた娘がモニター第一号になったりと。以来30年以上のご縁をいただいています(笑)。

―― 出会いは偶然でも、そうやってつながっていくのですね。

野中 ですね。人はそもそもつながっている、と。ジェームズ・ラブロック博士(地球そのものを1個の生命体とみなす「ガイア理論」を提唱した英国の環境科学者)は「このガイアの生命圏で生きている呼吸でつながっている生き物は皆家族・兄弟で運命共同体である」と言っていました。だからあの人のため息が私の深呼吸になる。できるならシェアしてもいいなと思う人と分け合いたいですけれどね(笑)。これが呼吸器の中の呼気で考えれば分かりやすいですが、エネルギー体としても同じでは? それを「気が合うか気が合わないか」という表現で理解しているのかも。

野中の場合、たとえば30人のグループのプロジェクトリーダーをやってくださいと頼まれたとする。会議室の扉をぱっと開けたとたんに「うわぁ、これはなしにしたい」というのがある(笑)。それはもう見えてしまうというか、感じてしまうもの。

物差しははかる道具ですよね。体重計だったら重さ、身長だったら長さ、高さ。でもこれを人生に当てはめると、モノゴトの「価値」をはかるモノと言える。価値を判断する時の物差しのメモリには、何が刻まれているのか?です。日本ももちろん、戦後のほとんどの先進諸国のメモリは「お金」でした。命が喜ぶか、喜ばないかなんて目じゃない。それどころか経済に爆進です。

もちろん「お金」は大事。でも、その経済競争爆進の結果が、こんにちの環境破壊以外の何者でもないわけです。だから今大切なのは、自分の中にあるモノゴトを考え測る時の「メモリ」のチェック。そして、チェンジだと思っています。

たとえば稲本さんとの出会いにしても「気が合う合わない」は、その方の持つ「メモリ」が醸し出すエネルギーとして、周波数のようにシンクロできるかできないか。その場で感じることのように思います。で、こうして『道』でも結んでくださった(笑)。

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●プロフィール

◎ のなか ともよ
東京都出身。上智大学大学院文学研究科博士前期課程修了。米国ミズーリ・コロンビア大学大学院留学(フォトジャーナリズム専攻)
帰国後NHKの「海外ウィークリー」「サンデースポーツスペシャル」など、スポーツから国際政治まで幅広い分野の番組キャスターとして活躍。テレビ東京「ワールド・ビジネス・サテライト」のキャスターとして知られる。ジャーナリスト活動のほか、各種社会団体、政府審議会の委員、企業の社外取締役などの役員として活躍。
2022年には三洋電機の社外取締役に就任、その後2005年~2007年同社代表取締役会長。2007年からはNPO法人ガイア・イニシアティブをたちあげ、地球環境問題解決を目指し、政府、消費者、企業に向けて様々な活動を展開している。Club of Rome(ローマクラブ)正会員。

  連 載

道217号 工藤清敏

◆健康回復学研究所所長 工藤清敏
連載『塩から社会を見てみれば』

「ミネラルはチームで仕事をする」

怪我と病気をきっかけに、ミネラルバランスにすぐれた塩を摂る大切さを知り実践してきた工藤清敏さん。長年にわたる塩の研究と実績を土台に、自然治癒力の要が塩にあることを全国に伝え歩いている。
減塩が当たり前になっている今、人と塩の関係から見えてくる、さまざまな社会の矛盾や課題を見つめていきます。

◎ くどう きよとし
精神免疫学をページ・ベイリー博士に学び、心と体に最も優しい治療法を探求。生き方、考え方、言葉と塩と植物で生活習慣病が回復していくことを伝えている。

道217号 前島由美

◆ゆめの森こども園代表 前島由美
連載『愛の関わりと連携で、輝きを取り戻す子どもたち』

「あきらめず、機を捉えて見守る」

療育支援施設「ゆめの森こども園」で、生き辛さを抱えている子どもたちに向き合う前島由美さん。愛情いっぱいの関わりと、親御さんや学校・地域と丁寧に連携によって本来の輝きを取り戻していく子どもたちの実例を紹介していきます。

◎ まえじま ゆみ
療育支援施設ゆめの森こども園を開き「発達障害」とされる子どもたちをサポート。子どもの食環境改革を目指す。

道217号 安藤誠

 

◆写真家・ネイチャーガイド 安藤誠
連載『日常の奇跡』

「新しい命の季節」

ネイチャーガイドとして自然と向き合う安藤氏。
目に見えないものを見、声なき声を聞くプロフェッショナルとして、私たちが見過ごしている「日常の奇跡」を、一瞬を切り取った写真とともに届けます。

◎ あんどう まこと
写真家/ウィルダネスロッジ・ヒッコリーウィンドオーナー&ガイド
北海道アウトドアマスターガイド。

道217号 佐々木隆

 

◆銀河浴写真家 佐々木隆
連載『私たちは銀河のなかに生きている』

「ヒロシマ・ナガサキのおもい」

生かされていることに気づけば、人生はもっと豊かになる。
銀河を舞台に生命の息吹を写しとる、佐々木隆氏の銀河浴写真。

◎ ささき たかし
銀河浴写真家。銀河と地球を一体化させた写真で新聞掲載多数、数々の賞を受賞。元公立高校教諭。

道217号 野村哲也

 

◆写真家 野村哲也
連載『地球を歩く ~知られざる絶景を求めて~』

「イタリアの旅」

世界に飛び出し旅するからこそ見える、日本のこと、自分自身のこと。
秘境と絶景を求めて 150ヵ国以上を旅してきた写真家 野村哲也氏の連載。

◎ のむら てつや
写真家/高校時代から山岳地帯や野生動物を撮り始め、〝地球の息吹き〟をテーマに、アラスカ、アンデス、南極などの辺境地に被写体を求める。渡航先は150ヵ国以上で著書は14作。

道217号 山元加津子

 

◆作家 山元加津子
連載『ありのままの私たち』

「サムシング・グレートの大きな大きな愛の中で」

人と違っていても、障がいがあっても、人はみな素晴らしい力を持っている。
植物も動物も人間も、みんなでひとつの命を一緒に生きている――。
長く特別支援学校で子供たちと接してきた山元加津子さんが伝える、生きる上で大切なこと。

◎ やまもと かつこ
長年、特別支援学校の教員を務める。作家。植物状態と思われる人も回復する方法があり、思いを伝える方法があることを広める「白雪姫プロジェクト」を推進中。古民家を中心とした「モナの森」で、生きる力を強くするための活動を行なう。

 

◆書家 金澤泰子
連載『きょうも、いい日』

「翔子の映画に思うこと」

ダウン症の書家として活躍し、また生活面でも独り立ちをはじめた娘、翔子さん。その成長の日々を、母金澤泰子氏が綴ります。
母娘の絆に、胸が熱くなります。

◎ かなざわ やすこ
書家。久が原書道教室主宰。
一人娘、翔子さんをダウン症児として授かり苦悩の日々を送るが、その苦しみを越えて、翔子さんを立派な書家として育て上げた。

季刊『道』 岩井喜代仁

 

◆茨城ダルク代表 岩井喜代仁
連載『今日一日を生きる』

「当事者がつくった仲間が集う場所 千葉 菜の花家族会」

薬物依存者が社会復帰を目指すリハビリ施設として、薬物依存回復の確立した方法論を持つダルク。
自ら薬物依存症の道を歩みながら、今は仲間の回復のために茨城ダルク代表を務め、各施設を回り責任者やスタッフを育てる岩井喜代仁さん。
仲間に励まされ、支えられ、許され、受け止められながら、入寮者が回復に向かっていく姿は毎回感動です。
ともに苦しむ仲間の絆があるからこそ、人は前に進むことができるのだと教えてくれます。

◎ いわい きよひろ
薬物依存回復施設 茨城ダルク「今日一日ハウス」代表 女性シェルター代表
自身が薬物依存症となり、苦しみ抜いた末にダルクと出合う。以来、救う側へと生まれ変わり、薬物依存に苦しむ子供たちを預かり、共に生きて回復を目指す。

道217号 気づく気づかせる

 

◆UK実践塾代表  宇城憲治
連載『気づく気づかせる』

「真似る力」

最先端のエレクトロニクス技術者として、さらには企業のトップとして活躍してきた宇城憲治氏は、現在徹底した文武両道の生き様と、武術を通して得た「気」によって、人間の潜在能力の開発とその指導に専念。
現在、氏は目に見えないものを目に見える形にするために、「普遍性、再現性、客観性」の実践検証をもって「目に見えないもの」の存在を解き明かす研究を先行させている。

◎ うしろ けんじ
㈱UK実践塾 代表取締役 エレクトロニクス分野の技術者、経営者として活躍すう一方で、武術の究極「気」の指導で人々に潜在能力を気づかせる活動を展開中。
創心館空手道 範士九段。全剣連居合道教士七段。宇城塾総本部道場 創心館館長

  編集後記

今号の巻頭対談は、宇城憲治先生に長く師事されてきた宮崎正志氏との師弟対談。宇城先生が言及された「五本指の部分ではなく、手の平の指導」。まさに人生、仕事、日常すべてに繋がる根幹の教えだからこそ、宮崎氏はスポーツというカテゴリーを越えて、学生の真の成長、幸せという方向へ大きく舵を切られ、ご自身も大きく成長された。そのエネルギーが未来の子どもたちに確実に伝えられていく様子に大きな希望を感じました。

稲本さんのFBの里山再生活動の発信に魅せられ取材依頼したところ、野中さんの古くからのご友人と伺いびっくり。嬉しい偶然は今号をパワーアップくださいました。会見タイトルを「森を守る」のイメージで考えていたら稲本さんから「人類はもはや〝森を守る〟姿勢や古い自然保護思想ではダメなところに来ている」と指摘いただき、現タイトルとなりました。妥協のない稲本さんの生き方が反映された会見となりました。

いつも素敵な笑顔で様々なご配慮をくださり、時にバシッと厳しく指摘くださる野中さん。男性社会のなかでどれだけ苦労されたか分からないほどなのに、なぜいつもあんなに明るくチャーミングでいられるのだろう。野中さんのバイタリティの源が何か、今回の会見で解けました!

丁寧に生き、伝える努力をしてこそ、エネルギーは伝わる。今号が教えてくれたことです。

  (木村郁子)

稲本正さんのインタビューで紹介できなかったエピソード。著書紹介にある「クロモジ」のお話。「お椀から建物まで」を稲本さんはさらに進化させて、森の香りの活用を展開しておられます。和菓子をいただく楊枝として知られるクロモジの芳香成分に様々な可能性が秘められていることをお話しくださり、クロモジの香りのおしぼりをくださいました。なんとも爽やかで、落ち着く香り。〝森〟をベースに、稲本さんの探究はまだまだ続く。湧き続けるエネルギーを感じました。

野中ともよさんは、ご両親のこと、おばあさまのことを情感豊かにお話しくださり、そのたとえがまた面白くて笑いっぱなし、頬が痛くなるほどでした。誰にでも分かりやすく、表現を変え角度を変え、しかも楽しく、表情もくるくると変わって、思わず引き込まれてしまう。この愉快さは文章では伝わらない?! 11月の交流イベントの鼎談に野中さんにご登壇いただきます。司会も務めてくだいますので、皆様ぜひ、ライブで感じていただきたいと思います。

宇城憲治先生の連載と本号表紙を飾ったイラストを描いてくださったのは、4月に特別支援学校高等部を卒業された柴﨑優翔君。動物が大好きなことが伝わってきます。見る人を思わず笑顔にする明るく優しい作品たち。今後個展の企画もあるそうです。インスタグラムをチェック!

(千葉由利枝)

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