時空を超える人間のエネルギー
「気」でひもとく、古代の不思議と偶然の必然
写真家 野村哲也
VS UK実践塾代表 宇城憲治
10代、20代の頃は、
写真家というのはひたすらシャッターチャンスを
待たなければいけないと思い込んでいました。
でも30代、40代になり、
僕にとって最良の状態、必要なものを見せてくれるのが
「自然」なのだと教わりました。
10歳から一人旅を始めた野村哲也さんは、高校時代から山岳風景や野生動物を撮るようになり、今や南米や極地など、150ヵ国以上の国々に被写体を求め、世界を舞台に活躍する。
とくに南米に行き出してからは、様々な偶然や奇跡を体験するようになったという野村さん。それはカメラを構える野村さんと自然との境界線が消え、無意識の中でこれまでにないような珠玉の写真が生まれるというもの。
気の世界を探求し、自分自身はもちろん、第三者にもその世界を示すことができる宇城氏は、「そこには気の法則性があり、すべてと調和融合を可能にする気のエネルギーは、心が差となって起こる。それが真理であるから」と語る。
対談では、宇宙の産物である人間の身体の不思議とともに、インカ文化に見る古代遺跡のパワーを土台に、あらためて人間とは何か、そのあるべき姿について語り合っていただいた。
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野村 今、宇城先生が「気を通す」と言われた時、何か宇城先生の大きな手が、僕の手にふわっと乗る感じがしました。
宇城 あ、そう感じましたか。いわゆる重力の力なのですが、空気が変わるのです。しかし今の一般常識では、たとえば、右手で自分の左手首を持つと、その右手は自分の意識で簡単に離せますね。ところがつかんだ左手のほうを意識すると、右手がはずせなくなるのです。つまり「意識している」ほうの手が動かせて、意識しないほうは動かせなくなるのです。
この一般常識を追求したのがフランスの哲学者モーリス・メルロ=ポンティ(1908~1961)ですが、彼の哲学は「両義性の哲学」と言って、「私の身体が『対象になるか、自己自身になるか』はどちらかであるとは言えない、つまり両義的である」と言っています。そして先ほどの左手、右手の関係と意識のあり方を通して、「両義性の哲学」を展開しているのです。しかしそれはあくまでも理論上のことですね。
私の場合はさらに次のようなことも実証しています。すなわち、こちらから気をかけると、野村君の意識は両手に働いているにも関わらず、両手とも動かせなくなるのです。
野村 うぅ、動けない……。
宇城 そうですね。メルロ=ポンティの理論があるからこそ、その理論は間違っているよとも言えるし、さらにその奥があるということも実証で示せるわけです。しかも、実はその両手にはエネルギーがあるのです。その証拠に他の人に両手をつかまれると、そのまま人を倒すことができます。この事は野村君が暗示にかかっていないことを裏付けているわけです。
意識が働く時、つまり何かをしようと欲が働く時、人間というのは本来の力が出ないようになっています。だから頭の命令の意識が働く時は、身体はいちばん弱くなるのです。
野村 本当ですね! 今、宇城先生が僕に気をかけて強くなっている時、宇城先生からすると、僕は無意識になっているわけですね?
宇城 そうです。意識があってもその奥にある無意識が働くと意識は消えてしまいます。人間というのは大きな自分の我欲を超越した時空の中に入ると、そういう力が出るようになっているのです。まさに自然体ですね。
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●プロフィール
◎ のむら てつや
1974年、岐阜県生まれ。
“地球の息吹”をテーマに、北極、南極、アフリカ、南アメリカなどに被写体を追い求める。2007年末から南米チリのパタゴニア、2010年から富士山&熱海、2012年から南アフリカ&イースター島と2年ごとに住処を変える移住生活を開始。現在までの渡航先は150ヵ国に及び、世界193ヵ国踏破を目指す。
秘境ガイド(主に南米やアフリカ)やTV出演(NHK「ホットスポット」「ダーウィンが来た!」など多数)、マスコミの撮影アテンドに携わり、国内外で写真を織り交ぜた講演活動を精力的に続けている。ナショナル・ジオグラフィック・フォトコンテスト2017世界第2位、英国科学雑誌NATUREの表紙に写真提供、Sony Academy専属講師、著作物14冊(最新刊は『ポリネシア大陸』福音館書店)。
◎ うしろ けんじ
1949年、宮崎県生まれ。
エレクトロニクス分野の技術者、経営者として活躍する一方で武道修行を積み、文武両道の生き様と、武術の究極「気」による指導で、人々に潜在能力を気づかせる活動を展開中。「気」によって体験する不可能が可能となる体験は、目に見えないものを信じられない人にも気づきを与えるとともに、人間本来の自信と謙虚さを取り戻すきっかけとなっている。
空手塾、道塾、教師塾、野球塾、企業・学校講演などで「気づく・気づかせる」指導を展開中。
㈱UK実践塾 代表取締役
創心館空手道 範士九段
全剣連居合道 教士七段
宇城塾総本部道場 創心館館長
土づくりは人づくり
元気野菜の畑で育てよう子供の感性と未来
NPO法人「大地といのちの会」理事長 菌ちゃんふぁーむ 園主 吉田俊道
大人には理屈でわかるように説明をしていますが、
本当の「ありがたいなぁ」と思える感性を育てるには、
やっぱり幼児期が一番いいんです。
これが世界を変える一番の早道かなと思っています。
「この写真の子たち、ブロッコリーを見る目が違うでしょう? どうしてこういう顔になったかというと、自分で育てたからです。もう、食べたくてしょうがない。そういう体験をした子供たちが大人になったら、地球に対するイメージが変わりますよ。地球が自分のお母さんという感じになりますからね」
吉田さんが展開する有機野菜農法は、まずは元気な土作りが土台だ。元気な土とは、吉田さんが「菌ちゃん」と親しみを込めて呼ぶ微生物が多い土のこと。有機物が十分に分解された、微生物が豊富にいる発酵した土では、微生物と野菜がしっかりつながるので、微生物のパワー(菌ちゃんパワー)が野菜に伝わり、より生命力あふれる野菜が育つ。
吉田さんは、そうした安全で健康な野菜作りを通し、病原菌も害虫も草もモグラも人間の敵などではなく、すべてに役割があり、そして自然界の命が循環しているということに気づけたという。
「自然界は本当に共生していた!」
コロナウイルスに怯え、ますます食の危機が叫ばれる現代社会において、本来の循環を身体で理解し、地球とつながる感性を持つ子供たちを育てたいと話す吉田さんに、その活動の熱い思いを聞いた。
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野菜から学ぶ命のバトン
吉田 たとえばホウレンソウだと、普通の農家のように肥料をたくさんやると、すべての葉っぱが青々していますが、生ごみリサイクルのやり方だと、追肥しないので外側がだんだん黄色くなるんです。
実は昔の冬野菜というのはみんな最後に肥料が切れて、黄色くなっていたんです。でもその部分を食べるとえぐみが一切なくなっていて、人間で言うと、おじいちゃん、おばあちゃんのように悟った味というのかな、そんな味になるんですよ。
その時に説明するのが、「この一番下の黄色い葉っぱは、以前、一番元気な葉っぱだったんだよね」と。子供たちはずっとホウレンソウの成長を見ているので、そのことを知っているわけです。そして「その葉っぱは自分ではそれ以上大きくならずに、そのまま栄養を真ん中に持ってきて、これから生まれる赤ちゃん葉っぱに栄養をやったよね。だから赤ちゃん葉っぱはこんなに大きくなったんだよね」。
つまり、お父さんお母さんホウレンソウの葉っぱの内側にその後生まれて成長している子供がいて、その外側にはおじいちゃん、おばあちゃんがいて、そのまた外側には、ひいおじいちゃん、ひいおばあちゃんがいる。そういうホウレンソウ家族の話をするんです。
そして「前は若くて一番元気だった今の黄色くなったおじいちゃん、おばあちゃんホウレンソウをどうする? 捨てる?」と聞くと、子供たちは「ううん、捨てない! 食べる!」って言うんです。実際食べたらおいしいんですよ。
ホウレンソウという一つの株の中でも、自分の成長をそこでやめて、次の命につないでがんばる姿があるわけですよ。
―― まさに、命の授業ですね。
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●プロフィール
◎ よしだ としみち
1959年、長崎市生まれ。九州大学農学部大学院修士課程修了後、長崎県庁の農業改良普及員となる。1996年、県庁を退職し有機農業を始める。1999年、佐世保市を拠点にNPO法人「大地といのちの会」を結成し、生ごみリサイクルによる菌ちゃん野菜作りと、おなか畑の土作りによる元気人間作りを全国に広げている。
2007年、同会が総務大臣表彰を受賞。2009年、食育推進ボランティア表彰。
長崎県環境アドバイザー。NPO法人「大地といのちの会」理事長、(株)菌ちゃんふぁーむ代表取締役。
◆写真家・ネイチャーガイド 安藤誠
連載『日常の奇跡』
「変わらない営み」
ネイチャーガイドとして自然と向き合う安藤氏。
目に見えないものを見、声なき声を聞くプロフェッショナルとして、私たちが見過ごしている「日常の奇跡」を、一瞬を切り取った写真とともに届けます。
◎ あんどう まこと
写真家/ウィルダネスロッジ・ヒッコリーウィンドオーナー&ガイド
北海道アウトドアマスターガイド。
◆一般社団法人ハニーファーム代表 船橋康貴
連載『ミツバチが教えてくれること』
「森の命たちが教えるコロナ後の生き方」
ミツバチ絶滅の危機は人類滅亡の危機
私たちが生きていくための環境維持に欠かせないミツバチの存在を伝え、守ろうと東奔西走する船橋氏。
その活動の「今」を伝える。
◎ ふなはし やすき
養蜂家・環境活動家。
世界中で激減しているミツバチを守るために、環境のプロとして、ミツバチを使った「ハチ育」や町おこしなどを行なっている。
◆銀河浴写真家 佐々木隆
連載『私たちは銀河のなかに生きている』
「銀河につながるフランツヨセフ氷河」
生かされていることに気づけば、人生はもっと豊かになる。
銀河を舞台に生命の息吹を写しとる、佐々木隆氏の銀河浴写真。
◎ ささき たかし
銀河浴写真家。銀河と地球を一体化させた写真で新聞掲載多数、数々の賞を受賞。元公立高校教諭。
◆写真家 野村哲也
連載『地球を歩く ~知られざる絶景を求めて~』
「邂逅の旅(カナダ・ハイダグアイ)」
世界に飛び出し旅するからこそ見える、日本のこと、自分自身のこと。
秘境と絶景を求めて 150ヵ国以上を旅してきた写真家 野村哲也氏の連載。
◎ のむら てつや
写真家/高校時代から山岳地帯や野生動物を撮り始め、〝地球の息吹き〟をテーマに、アラスカ、アンデス、南極などの辺境地に被写体を求める。渡航先は150ヵ国以上で著書は14作。
◆作家 山元加津子
連載『ありのままの私たち』
「たいへんな今だからこそ、できること」
人と違っていても、障がいがあっても、人はみな素晴らしい力を持っている。
植物も動物も人間も、みんなでひとつの命を一緒に生きている――。
長く特別支援学校で子供たちと接してきた山元加津子さんが伝える、生きる上で大切なこと。
◎ やまもと かつこ
長年、特別支援学校の教員を務める。作家。植物状態と思われる人も回復する方法があり、思いを伝える方法があることを広める「白雪姫プロジェクト」を推進中。
◆茨城ダルク代表 岩井喜代仁
連載『今日一日を生きる』
「自由の中で生きる ―― 茨城ダルクの今」
薬物依存者が社会復帰を目指すリハビリ施設として、薬物依存回復の確立した方法論を持つダルク。まだまだ課題はあるものの、行政との連携も進み、認知度も高くなった。それは、全国にダルクの数が増えたことも大きく影響しているだろう。
ダルクと出合って28年、自らも薬物依存回復の道を歩みながら、一人でも多くの仲間の回復を求めて各地にダルクを開設してきた岩井喜代仁氏に、各施設の開設と現在に至る道のりを聞くとともに、施設責任者の手記を紹介する。
◎ いわい きよひろ
薬物依存回復施設 茨城ダルク「今日一日ハウス」代表 女性シェルター代表
自身が薬物依存症となり、苦しみ抜いた末にダルクと出合う。以来、救う側へと生まれ変わり、薬物依存に苦しむ子供たちを預かり、共に生きて回復を目指す。
◆UK実践塾代表 宇城憲治
連載『気づく気づかせる』
「未知の正と負のエネルギー ― どう共存するか ―」
最先端のエレクトロニクス技術者として、さらには企業のトップとして活躍してきた宇城憲治氏は、現在徹底した文武両道の生き様と、武術を通して得た「気」によって、人間の潜在能力の開発とその指導に専念。
現在、氏は目に見えないものを目に見える形にするために、「普遍性、再現性、客観性」の実践検証をもって「目に見えないもの」の存在を解き明かす研究を先行させている。
◎ うしろ けんじ
㈱UK実践塾 代表取締役 エレクトロニクス分野の技術者、経営者として活躍すう一方で、武術の究極「気」の指導で人々に潜在能力を気づかせる活動を展開中。
創心館空手道 範士九段。全剣連居合道教士七段。宇城塾総本部道場 創心館館長
◆編集部コラム 『心の奥の取材ノート』
「映画俳優 菅原文太さんのこと」
交わした言葉、ちょっとした仕草、振る舞い ――
今もありありと思い出す、取材で出会った人たちの思い出を綴ります。