横綱 ―― 前人未到の境地、さらにその先へ
〝体談〟で語り合う、目に見えない内面の世界
第69代横綱 白鵬 VS UK実践塾代表 宇城憲治
人間にはそれぞれ器があるという話がありますが、
僕の器にはまだまだ水が入っていく。
だから先祖様、両親というもの、そういう何か目に見えないものに
自分は守られているのかなと思うようになりました。
42回という、大相撲史上最多の優勝記録を誇る横綱白鵬関。
入門時62キロ、175センチだった少年は、18年後、158キロ、192センチの、まさに威風堂々とした力士となった。
横綱となった今でも
「22歳の時に目指したのが横綱。25、26歳の頃に目指したのも横綱。
今、目指しているのも横綱なのです」
と語る。
いかにして前人未到の記録をつくりあげたのか。
外からは見えない横綱の強さの秘密とは。
武術は理屈でなく、まずはやってみせる世界――
そこを共通点に、武術家宇城憲治氏に、横綱の目に見えない内面を引き出し、言葉にできない世界を、まさに、対談ならぬ〝体談〟を通して語り合っていただいた。
ロングインタビュー
人間本来の姿を呼び戻す
アートの世界
フランス人芸術家 オスカー・ロベラス
アーティストは自然をただ映しているのではなく、
そこからくるエネルギーを通訳して発信するメッセンジャーなのです。
自然を尊重し大事にするなかで人間の本能にアートが働きかけることによって
人間本来の「善」を呼び戻し、あるべき姿に戻していく、
芸術にはそうした社会的な使命があると私は思っています。
周囲を豊かな自然林で囲まれた徳島県神山町にアトリエを構える、フランス人アーティスト オスカー・ロベラスさん。オスカーさんは、6歳になる前からアートに興味を持ち、8歳の頃にはすでに芸術家になることを心に決め、当時出会ったイサム・ノグチの作品から日本文化をベースとする作品に心を奪われたと言う。
石、金属、ガラス、植物など様々な素材や技法を使ったオスカーさんの作品は、常に自然がテーマ。掲載した作品からは、言葉以上のオスカーさんの自然観が伝わってくる。同時にインタビューからは、オスカーさんの可能性を静かに育んだ、ご両親や教師といった大人の暖かなまなざしも伝わってくる。お話は、これからの子供たちのために、どんな大人であるべきかをも示唆してくれるものだった。
農業・福祉の連携で実現する、誰もが活躍する世界
自然栽培農地でイキイキ育つ生命たち
農福連携自然栽培パーティ栽培顧問 佐伯康人
自然の循環する美しさ。
自分を人間としてではなく自然の一部として見た時に
ありがたさがこみあげた。初めてやった田んぼでしたが、
多分自分の心のどこかにある懐かしさがあって、心が震えたんです。もう目がうるんで、感動を越えた状態でした。
三つ子ちゃんに似た世界は本物だと思い、
これをやり続けてみようと思ったんです。
現在、全国の障がい者施設に自然栽培を広げる活動をしている佐伯康人さんは、元ミュージシャン。東京でプロとして活動したのち愛媛県松山市に移り父親の事業を引き継いだ。
33歳の時に、障がいを持って生まれた三つ子の父となったことで、それまでの生き方が一変。
地域の人に助けられながら大変なリハビリや子育てをした経験が、佐伯さんの原点となり、農業の発展と障がい者の仕事創出という両方のメリットを生み出す農福連携の活動を始めた。そして辿り着いたのが、地域コミュニティーを巻き込んでの、障がい者施設による、除草剤、肥料も一切使わない、自然栽培による農業だった。
楽しく仲よく働いてこそ、おいしい野菜が育まれ、関わるすべての人、すべての生きものが復興する。
佐伯さんが自ら実践して辿り着いた真実は、佐伯さんの生き方そのものにつながっていた。
新刊出版記念インタビュー
どんな子も必ず救えると信じて
『輝きを取り戻す“発達障がい”と呼ばれる子どもたち』発刊によせて
著者・ゆめの森子ども園代表 前島 由美
『食べなきゃ、危険!』著者・子どもの心と健康を守る会代表 国光 美佳
感覚過敏などで学校に行けなくなったり、生きづらさを感じている子どもたちを食と愛ある関わりによって回復させる取り組みをしている「ゆめの森子ども園」代表の前島由美氏。
その実例集『輝きを取り戻す“発達障がい”と呼ばれる子どもたち』が11月に発刊となる。この本の実現に欠かせないのが、子どもの劇的な改善を支えた食学ミネラルアドバイザー・国光美佳氏の存在だ。お二人に、運命的な出会いから本の出版にいたるまでの思いを語っていただいた。
連 載
◆写真家・ネイチャーガイド 安藤誠 連載『日常の奇跡』
「星空カヌー/Starlit Sky Canoe」
ネイチャーガイドとして自然と向き合う安藤氏。
目に見えないものを見、声なき声を聞くプロフェッショナルとして、私たちが見過ごしている「日常の奇跡」を、一瞬を切り取った写真とともに届けます。
◆一般社団法人ハニーファーム代表 船橋康貴 連載『ミツバチが教えてくれること』
「いよいよ、ミツバチマークは世界へ!」
ミツバチ絶滅の危機は人類滅亡の危機
私たちが生きていくための環境維持に欠かせないミツバチの存在を伝え、守ろうと東奔西走する船橋氏。
その活動の「今」を伝える。
◆金澤泰子 連載『きょうも、いい日』
「高祖父の願いか? 翔子の活躍」
ダウン症の書家として活躍し、また生活面でも独り立ちをはじめた娘、翔子さん。その成長の日々を、母金澤泰子氏が綴ります。
母娘の絆に、胸が熱くなります。
◆宇城憲治 連載『気づく気づかせる』
「潜在力を引き出す呼吸法
―― 対立から調和へ ――」
現在、氏は目に見えないものを目に見える形にするために、「普遍性、再現性、客観性」の実践検証をもって「目に見えないもの」の存在を解き明かす研究を先行させている。
◆茨城ダルク代表 岩井喜代仁 連載『今日一日を生きる』
「『自分の足で歩く』を徹底する施設
九州ダルク」
薬物依存者が社会復帰を目指すリハビリ施設として、薬物依存回復の確立した方法論を持つダルク。まだまだ課題はあるものの、行政との連携も進み、認知度も高くなった。それは、全国にダルクの数が増えたことも大きく影響しているだろう。
ダルクと出合って27年、自らも薬物依存回復の道を歩みながら、一人でも多くの仲間の回復を求めて各地にダルクを開設してきた岩井喜代仁氏に、各施設の開設と現在に至る道のりを聞くとともに、施設責任者の手記を紹介する。
◆写真家 野村哲也 連載『地球を歩く ~知られざる絶景を求めて~』
「ラストフロンティア」
世界に飛び出し旅するからこそ見える、日本のこと、自分自身のこと。
秘境と絶景を求めて 120ヵ国以上を旅してきた写真家 野村哲也氏の連載。
◆銀河浴写真家 佐々木隆 連載『私たちは銀河のなかに生きている』
「天の川銀河 偉大なる生命体」
生かされていることに気づけば、人生はもっと豊かになる。
銀河を舞台に生命の息吹を写しとる、佐々木隆氏の銀河浴写真。
◆作家 山元加津子 連載『ありのままの私たち』
「消してしまいたい出来事も、きっと大切」
人と違っていても、障がいがあっても、人はみな素晴らしい力を持っている。
植物も動物も人間も、みんなでひとつの命を一緒に生きている――。
長く特別支援学校で子供たちと接してきた山元加津子さんが伝える、生きる上で大切なこと。
◆編集部コラム 『心の奥の取材ノート』
「小野田自然塾理事長・元陸軍少尉 小野田寛郎さんのこと」
交わした言葉、ちょっとした仕草、振る舞い ――
今もありありと思い出す、取材で出会った人たちの思い出を綴ります。