豊かな身体の学びを幼児教育へ
子ども力をそのまま伸ばすために
東京大学名誉教授・日本保育学会会長 汐見稔幸 VS UK実践塾代表 宇城憲治
教育とか文明によってなくした力というのはものすごく多いですよね。
保育の世界では、そういう子どもの力をいっぱい発見できるんです。
理性が一番大事なんだという教育を受ける前には、子どもたちは
身体全体ですべてを豊かに判断しているんです(汐見)
学生時代はとことん「人間の平等とは何か」を模索し、真の幸せにつながらない日本の科学技術のあり方への疑問から人間研究の道へ。教育学・人間学、育児学を専門とされ、育児に関わる著書をこれまで40冊以上執筆されてきた汐見稔幸氏。汐見氏は、今、子どもが生まれながらに遺伝子に書き込まれている能力が、現代教育によって失われつつあると指摘する。人間が育つということはどういうことか。これを掘り下げることで、教育の枠組みをとらえなおし、幼児教育での新しい保育のあり方につながると語る。
対談では、気というエネルギーで人間の潜在力を引き出す実証をしている宇城氏と、今の幼児教育のあり方、人間のあり方を語り合っていただいた。
ロングインタビュー
すべての人が ともに生きる
「みんなの学校」そして「みんなの社会」へ
子どもの事実から大人は学び直しをしていこう
大阪市立大空小学校 初代校長 木村泰子
先生である前に、自分は社会人か?
社会人の前にひとりの大人か?
大人の前にひとりの人間か?
ひとりの人間として目の前の子どもと対等にどう学び合えるか、
この関係性がなかったら学びの本質なんて絶対に生まれない。
そこは肝に銘じているんですよ。
ドキュメンタリー映画『みんなの学校』は2015年2月に全国で公開され大ヒットした。木村泰子先生は、この映画の舞台となった大阪市の公立大空小学校の初代校長だ(2015年まで)。
この大空小学校の約束はたった一つ。それは「自分がされていやなことは人にしない、言わない」。どんな子も、義務教育で受けた環境や周りの大人の「空気」を身体に吸い込んで成長し社会に出る。木村先生は、今の社会のあり方はそうした義務教育で体験したことがベースとなって作られている。だからこそ、義務教育の9年間で子どもをどのよう空気の中で育てるかが、今大きく問われていると指摘する。
現在は、全国各地をまわり講演活動を展開されている木村先生に、「みんなの学校」の実践を社会で実現していくために、今、私たち大人がどう変わっていくべきか、熱く語っていただいた。
社会問題は〝仕事〟で解決!
知る勇気、行動が世界を変える
特定非営利活動法人「NGO GOODEARTH」代表 藤原ひろのぶ
自分とは関係ないのではなくて、そのつながりのところを
僕らは意識して見なくなってしまっているから、気づけない。
本来「問題」に身近も遠いもないんですよ。
それは自分の目の前に見えているか、見えていないかなんですね。
実は本質的には一緒なんです。
ギニア、ネパール、バングラデシュ。藤原さんが現地での貧困の原因をたどっていって見えた現実、それは私たちの「豊か」と言われる生活の先の先に、どれだけ働いても抜け出せない貧困状態の人の労働力があるということだった。
つきつめればすべてがつながっていて、私たちが遠い問題につながっていることに気づいていないだけ――。
藤原さんは、身近な健康や環境問題を発信する傍ら、ボランティアではなく事業という形で世界の貧困や社会問題を解決する土台をつくりたいと、各地で雇用創出事業を展開。現在は、バグラデシュで現地雇用の創出やギフトフード事業を行なっている。
藤原さんの活動への思い、行動の原動力を聞いた。
連 載
◆写真家・ネイチャーガイド 安藤誠 連載『日常の奇跡』
「眼差し 日々丁寧」
ネイチャーガイドとして自然と向き合う安藤氏。
目に見えないものを見、声なき声を聞くプロフェッショナルとして、私たちが見過ごしている「日常の奇跡」を、一瞬を切り取った写真とともに届けます。
◆一般社団法人ハニーファーム代表 船橋康貴 連載『ミツバチが教えてくれること』
「奇跡のハチミツとミツバチマーク」
ミツバチ絶滅の危機は人類滅亡の危機
私たちが生きていくための環境維持に欠かせないミツバチの存在を伝え、守ろうと東奔西走する船橋氏。
その活動の「今」を伝える。
◆金澤泰子 連載『きょうも、いい日』
「予定がいっぱい、翔子の毎日」
ダウン症の書家として活躍し、また生活面でも独り立ちをはじめた娘、翔子さん。その成長の日々を、母金澤泰子氏が綴ります。
母娘の絆に、胸が熱くなります。
◆宇城憲治 連載『気づく気づかせる』
「『気』は、目に見えないものを見える形にし、人間を豊かにする“技術”である」
現在、氏は目に見えないものを目に見える形にするために、「普遍性、再現性、客観性」の実践検証をもって「目に見えないもの」の存在を解き明かす研究を先行させている。
◆茨城ダルク代表 岩井喜代仁 連載『今日一日を生きる』
「家屋提供からはじまった施設 ―― 富山ダルク開設設」
薬物依存者が社会復帰を目指すリハビリ施設として、薬物依存回復の確立した方法論を持つダルク。まだまだ課題はあるものの、行政との連携も進み、認知度も高くなった。それは、全国にダルクの数が増えたことも大きく影響しているだろう。
ダルクと出合って27年、自らも薬物依存回復の道を歩みながら、一人でも多くの仲間の回復を求めて各地にダルクを開設してきた岩井喜代仁氏に、各施設の開設と現在に至る道のりを聞くとともに、施設責任者の手記を紹介する。
◆写真家 野村哲也 連載『地球を歩く ~知られざる絶景を求めて~』
「100キロの蛍道(アルゼンチン)」
世界に飛び出し旅するからこそ見える、日本のこと、自分自身のこと。
秘境と絶景を求めて 120ヵ国以上を旅してきた写真家 野村哲也氏の連載。
◆銀河浴写真家 佐々木隆 連載『私たちは銀河のなかに生きている』
「太陽と月 地球照」
生かされていることに気づけば、人生はもっと豊かになる。
銀河を舞台に生命の息吹を写しとる、佐々木隆氏の銀河浴写真。
◆作家 山元加津子 連載『ありのままの私たち』
「花が咲くように、私は私のなすべきことを」
人と違っていても、障がいがあっても、人はみな素晴らしい力を持っている。
植物も動物も人間も、みんなでひとつの命を一緒に生きている――。
長く特別支援学校で子供たちと接してきた山元加津子さんが伝える、生きる上で大切なこと。
◆編集部コラム 『心の奥の取材ノート』
「長崎原爆被爆者 谷口稜曄さんのこと」
交わした言葉、ちょっとした仕草、振る舞い ――
今もありありと思い出す、取材で出会った人たちの思い出を綴ります。