189号 (2016夏)
テーマ 「生き抜く知恵と力」
2016年7月25日発売
「森に行けば、森の揮発性物質でストレスが緩和される。NK細胞が活発になってガンになりにくい体をつくる。香り物質だけでなく音も関係している。電磁波も関係しているかもしれない。すなわち人間に影響しているのは一つのことではないんですね」(今井)
「あらゆることが影響しあっている。だからいいところの一部を取り出してそれだけ抽出しても駄目だ、ということですよね」(宇城)
自然はいつだって黙って私たちを生かしてくれている―――
そのことを知って謙虚になり、成長することこそが本当の学びではないでしょうか。そういった学びの原点が教育から失われては、子どもたちが危ない、未来が危ない。
子どもたちを守るために、大人こそ謙虚に学び、吸収する姿勢を取り戻したい。
巻 頭 対 談
自然はいつも教えている
冒険心、探究心、観察力――生き抜く知恵と力を子供たちへ
登山家・医学博士 今井通子 VS UK実践塾代表 宇城憲治
「一歩先に出たら分からないものに対する対応能力。
冒険心、探検心、発展的にものを考える心を育てるには、これはもう自然の中が一番。
雨が降るかと思えば、かんかん照りになったり、
水が流れたと思えば埃だらけになったり、自然は色々ですものね。」
医師であり登山家である今井通子氏は、1971年、女性初の欧州三大北壁完登者としてその名を世界にとどろかせた。その後も世界の高峰で活躍し、現在は一つひとつ医学的に裏付けされた森の持つ人間の心身を癒す効果を、森林浴セラピーとしてその普及に尽力し、大自然を舞台に地球規模の環境保護活動や人間と自然との関係の大切さを訴え続けるなど、多岐にわたる活動を展開している。
宇城氏との対談では、自然と人間との向き合い方、自然のもつ魅力、その不思議なエネルギーについて語っていただいた。
ロングインタビュー
人間をつくるとは、真の教育とは
子どもの「なぜ?」に向き合って70年、私の実践教育
教育者・僧侶 無着成恭
日本は滅びの現象に入っている。
食い止めるには教育者のレベルをアップするしかない。
敗戦によって教育のあり方が激変するなかで、僧侶でありながら教職に就いた無着成恭氏。赴任した貧しい山村の子どもたちを前に、自分でより良い生活を切り拓いていくための「ほんものの教育」をと願って活用したのが、綴り方(作文)だった。『山びこ学校』にまとめられた子どもたちのひたむきで克明な生活記録は読む人の胸を打ち、戦後教育に大きな影響を与えた。
子どもの自発性を引き出し好奇心を育てる姿勢は、ラジオ「全国こども電話相談室」を生み、レギュラー回答者として33年間、子どもたちの素朴かつ本質的な質問に向き合ってきた。
常に人間をつくるとはどういうことかを自らに問い実践する無着氏に、今の教育について伺った。
追 悼
近藤亨氏 「夢に生きよ」
本誌の巻頭対談をはじめ、連載記事の掲載、宇城憲治氏との特別講演会、そして本年3月にはその偉業を伝えるDVDを制作させていただいた近藤亨氏が、2016年6月9日、お亡くなりになりました。94歳でした。葬儀はご家族・近親者のみで行なわれました。
連 載
◆茨城ダルク代表 岩井喜代仁 連載『今日一日を生きる』
私たちに向けられた神の意志を知り
それだけを行なっていく力を求めた
薬物依存症リハビリ施設・ダルクの回復のあり方は、入寮者、スタッフにかかわらず、同じ苦しみを知る仲間が回復に向かう姿を互いに見せることにある。
ダルクと出合って24年、施設や家族会を牽引しながら、自らも回復の道を歩み続ける岩井氏に薬物依存回復に向かう生き方を聞くとともに、回復途上にある入寮者の手記を紹介する。
◆銀河浴写真家 佐々木隆 連載『私たちは銀河のなかに生きている』
梅雨晴れの室生滝谷花の里(奈良)
生かされていることに気づけば、人生はもっと豊かになる。
銀河を舞台に生命の息吹を写しとる、佐々木隆氏の銀河浴写真。
◆書道家 金澤泰子 連載『あふれる真心と愛』
いきいきキラキラ 翔子の毎日
待望の娘をダウン症として授かり、絶望のなか親子二人三脚で書の道を歩んできた金澤泰子さん。
娘 翔子さんを書家へと育て上げた金澤さんが、翔子さんの純真な魂が引き起こす奇跡の数々を綴る。
◆伊藤忠商事理事 木暮浩明 連載『うつくし、日本』
恩讐を超えた日米の絆
日本を代表する総合商社の商社マンとして、イギリス、アメリカ、東欧、中近東、
通算17年間の駐在経験のある木暮氏が語る、日本人とは。真の国際人とは。