季刊 『道』 No.156 2008年春号 (\1,200) [購入する] [読者の声]
越える努力
目の前の壁から逃げずに向かっていく。
その努力、勇気こそ次の壁を越える力となるのです。
[対談] 「もう一丁!」 その厳しさが育てる越える力
第48代横綱 大鵬 納谷幸喜 VS UK実践塾代表 宇城憲治
「もう一丁来い、もう一丁来い」
そうやって最後の力を振り絞らせますよ。
それが全部身になるわけです、苦しい時に。
しんどいからってやめたら、それ以上絶対に伸びていかないんです。
第48代横綱大鵬の有名な著書『巨人、大鵬、卵焼き』の冒頭に、天才と言われたり、何かにつけて当時人気の巨人と同列に見られることを嫌った親方の、「僕は天才じゃない、努力家だ。妥協せず、自分が納得するまで徹底した。いい選手をそろえて強くなった巨人と、裸一貫、稽古、稽古で横綱になった私が何で一緒なんだと考えてしまう」という言葉があります。
樺太での出生の日から、母親を助けて苦学した子供時代、相撲界に入り戦後最強の大横綱に上り詰めるまで、ただひたすら努力を重ねた日々。
「徹底してやってきた人」だからこそ、相撲界のみでなく日本の現状、将来について語られた言葉には、言い訳を許さぬ重みと迫力がありました。
なや こうき
昭和15年(1940年)樺太出身。第48代横綱大鵬。16歳から相撲界に入る。昭和35年1月新入幕、11月20歳で初優勝、大関昇進。昭和36年に横綱昇進。ライバル・柏戸とともに「柏鵬(はくほう)時代」と呼ばれる大相撲の黄金期を築いた。優勝32回、6連覇2回、45連勝などを記録した。昭和46年に引退、一代年寄大鵬親方として後進の指導にあたり、平成17年に相撲博物館館長となり現在に至る。
[会見] あなたが歩んでいる時間――それがあなたの“いのち”です
聖路加国際病院理事長 日野原重明
いつか伝えたいではなく、いま伝えたいことがある。
70余年の長きにわたり医療現場に携わり、96歳の今もなお、現役医師として現場に立ち続け、日々、ホスピス患者を診察し、終末医療の普及や医学・看護教育に力を注ぎ、多くの講演活動を通していのちと平和の大切さを伝えておられる聖路加国際病院理事長・日野原重明先生。今、小学校で子供たちにいのちの授業をすることが、自らのエネルギーとなっていると語る先生に、いま伝えたい“いのち”への思いを語っていただきました。
ひのはら しげあき
明治44年山口県生まれ。京都大学医学部卒。聖路加国際病院理事長、同名誉院長、聖路加看護大学理事長、同名誉学長。終末医療の普及や医学、看護教育の刷新に力をそそぐ。平成12年には「75歳以上」の新しい生き方を提唱する「新老人の会」をたちあげる。平成17年文化勲章受章。
[会見] 時は命――有限なる人生に、志を定め行動せよ
明治神宮武道場 至誠館館長 稲葉 稔
決断は知恵の根源です。
人間、決断するからこそ、追い込まれても知恵が出てくるのです。
決断しないうちは生きた知恵は出てきません。
損も得もないと、欲を去って決断することによって、行動ができるのです。
それが剣太刀です。
20代に晩年の鹿島神流宗家国井善弥師、そして神道思想家の葦津珍彦師に師事し、以来、常に武道的視野から日本の歴史を見据えてきた稲葉師範。
両師との出会いから育まれた師範の武道観、日本の現代を見る眼と将来への思い。そして、有限な人生の中で志を立て、実践する中で今を充実させることの大切さ。師範の武道に込める思いを語っていただきました。
いなば みのる
昭和19年、東京生まれ。明治大学卒。高校卒業時に合気会本部道場に入門。昭和40年春、鹿島神流国井善弥師に入門。神道思想家 葦津珍彦師にも師事し、日本思想を学ぶために神社新報社記者となり、民族精神回復運動にかかわり、神道と武道を探求する。現在、至誠館館長。
[会見] 残して活かす 古民家のエネルギーで元気になる人と街
繁昌店舗仕掛處 サンワ工務店社長 山野潤一
使われなかったものをもう一度呼び戻す作業をすると、
小さなものにまで気を配るようになる。
すると昭和の初めの装いの家を、経験もないのに若い人たちが「なつかしい」と言ったりする。
そこに何かを感じてくれるんです。
熊本市在住のサンワ工務店社長・山野潤一さんは、工務店でありながら、民家の再生設計や、出店を希望する若者への経営アドバイザー、店舗のデザインなど、一人何役もこなすユニークな仕事をされています。山野さんが手がける古民家の再生は、ただ改築するのではなく、その家に代々住み続けた人々の思いや心を大切に残しながら、今に蘇らせる作業です。「壊して新しく」ではなく、「残して活かす」をビジネスにしている山野さんの活動と、そのエネルギーを取材しました。
やまの じゅんいち
1954年、熊本市出身。サンワ工務店代表。家具職人だった父親のあとを継ぎ、商店建築、店舗改装、設計施工業を営む。熊本市内を中心に、古い民家や蔵を再利用した店舗改築を数多く手がけ、とくに若者の起業には積極的にかかわり経営の相談にものる。熊本UK実践塾生。
■ うつぐみの心で一つになる竹富島――種子取祭が育む豊かな心とエネルギー
取材・伊藤孝治(UK実践塾 高校教諭)
「文化の継承をもっとよく知りたいなら、ぜひ種子取祭を見に来てください」そう言われて再び訪れた竹富島。
600年の文化を継承することの具体的な姿に、沖縄の途方もない心の豊かさを感じた。
竹富島では、種子取祭の継承が、「人が文化を守り、文化が人を育てる」という美しい暮らしの循環を創っていた。
【連 載】
■生き抜くための稽古
料理家 辰巳芳子
「命のスープにとりくむ方へ」
■剣と生きる
剣道範士八段 井上義彦
「武道の存在価値――日本人としての自然体を守る」
■薬物依存症――子供たちと共に生きる
茨城ダルク代表 岩井喜代仁
「今の社会のあり方と薬物問題がひとつになった時、本当の予防ができる」
■失われた日本人の美徳
合気道九段・満州建国大学経済学部卒 奥村繁信
「日本人の誇りを投影する花『桜』」
■あくなき向上心に学ぶ
なぎなた範士 澤田花江
「もうちょっと上と思いやってみる。だから“頂点”はない」
■伝承のともしび
合氣道スクールズオブ植芝主宰 アメリカフロリダ在住 五月女貢
「生命の産屋――万有の生命は宇宙空間と宇宙的時間の流れの中で創造された」
・木暮浩明 「うつくし、日本」 大局観を見失うまい!
・佐々木望鳳馨 「先哲の教え」 歴史とは人物史なり
・井上強一「基本を守る」 覚悟、忍耐
・佐々木の将人 「なるほど」 呼吸法と松竹梅
・野中日文 「思想としての剣」 自立の時代の精神の位取り
・森 恕 「琢磨会と大東流」 大東流の技
・黒田鉄山 「伝書に守られて」 脇
・20代の視点 (リレー連載・大滝則和) 自主性を育てる――保護司 飯野満さんに聞く
商品情報: dou156, A4判 84頁