2018年9月26日夜、緒方孝市監督率いる広島東洋カープがリーグ優勝を果たしました。おめでとうございます!
3連覇となった今年は、念願の本拠地広島のマツダスタジアムで決着を迎え、街ぐるみで歓喜に湧く様子から、市民に愛されていることが伝わってきます。
緒方孝市監督は、2年前の2016年、25年ぶりのリーグ優勝を果たされたあとに、季刊『道』191号(2017冬)で「宇城憲治巻頭対談」にご登場いただきました。
2001年から宇城先生の実践指導を受け、師とあおぎ、その教えを指針に進んでこられたことが語られました。
対談の一部を抜粋します。
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【緒方】
「反省して準備する」ですね。勝とうが負けようが、「できたか、できなかったか」が大事なのであって、勝ってもできなかったことがたくさんありましたし、負ければ負けるだけの原因があった。その反省と次への準備、その日々の繰り返しのなかでやってきたのが良かったと思います。
やはり「何がなんでも優勝するぞ」という気持ちだけでは絶対に勝てないし、逆に結果ばかりを思っていた頃は本当に苦しかったです。
知り合いから教えていただいたのですが、「結」つまり「結び」に専念すれば、「果」が生まれるのだと。「果」ばかりに専念したら、「苦」が生まれ、苦しいばかりになると。まさにこの言葉は去年の自分だなと思いました。ですから今年はとにかく結び、自分のやるべきことに専念する。気持ちの向け方がそこだけでした。
実は先生に初めてお会いした時(2001年)に、「あなた、プロなんでしょう」と言われましたよね(笑)。ハンマーで殴られるようにそのことを突き付けられた。
「絶対に負けない」「勝つぞ」という気持ち比べだったら、アマチュアの高校生のほうが強いと思うんですね。プロというのは、それは当たり前のことであって、根性論だけでは結果はついてこない。技術レベルで戦っていかなくてはいけない、と。
【宇城】
そうでしたかね(笑)。「勝つぞ」という気持ちは誰でも持ちますが、それは精神的な根性論であり、プロとしては絶対あってはならないことで、まずは技術力、そしてそれを裏付ける「事理一致」のあり方が大切だと思うんですね。
【緒方】
そのことに気づいたら、自分のなかでバタバタしなくなったんです。相手のベンチの動きを見て、ああ、こういうことをやりたいんだろうなというのが客観的に見えるようになった。ということは、今回自分が見ているように、去年の自分は相手に簡単に見破られていたんじゃないかな、と思ったんです。自分で反省もしているところなのですが。
【宇城】
しかし、すごい成長ですね。
【緒方】
いや、いや。もっともっと結果にこだわらずに、「こういう野球をするんだ」というのを選手一人ひとりに伝えていきたい、チームの力としてもっともっと大きくするために、やらなくてはならないことがたくさんあるな、と思っています。
【宇城】
私は長年エレクトロニクス関係の開発技術者をやってきましたが、その時の信念としての言葉があるのですが、「設計はだいたいよろしいでは困る。実は一滴の水も漏らさぬ緻密さが絶対で、プロはそれを案外苦しまずに実践している。しかし、それ以上に重要なことは、その設計が正しいかどうかを検証する工夫こそ急がねばならない」というものです。
それはまさに製品開発において100点が当たり前であって99点という妥協は許されないということなんですね。完成してこそ商品となるわけですから。
野球も本来は同じだと思うんです。人間対人間の勝負なので、技術力だけでは難しいところがあると思いますが、常にこの打っているあり方が正しいかどうか、それをコンスタントに成績につなげることができているかどうか、その事理一致の法則性を自分なりに見つけ出していくことが大事だと思うんですね。
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球団史上初だというリーグ優勝3連覇。
その喜びのインタビューにおいても選手をねぎらい、ファンへの感謝を述べた緒方監督は、
「リーグ優勝は達成しましたが、これがゴールではない。日本一というゴールに向かってまだ戦いは続きます。ご声援をよろしくお願いいたします」と、次を見据えておられました。
日本シリーズも、引き続き応援したいと思います!
健闘をお祈りいたします。
[『道』191号]