07 11月

安藤誠氏 『原野から』出版記念講演会が開催されました

2022年11月3日(木祝)、東京都 町田市文化交流センターにて、ネイチャーガイド・写真家 安藤誠さんの『原野から』出版記念講演会が開催されました。

安藤さんは毎年恒例の「秋の全国ツアー」に10月中旬、北海道鶴居村ヒッコリーウィンドからオートバイで出発。
岩手、群馬、福岡、兵庫、大阪、京都、名古屋、静岡……と、時に1日に2講演をこなしながら、前日に町田市に到着、この日を迎えました。

会場には62人が来場くださり、オンライン参加(見逃し配信)には52人のお申し込みをいただきました。

冒頭は、ヒッコリーウィンドのスタッフである山本浩史さんと山田佳奈さんにお話しいただきました。
山本さんからは、安藤さんとの出会いと、安藤さんが主宰するオンライン講座「至誠塾」について動画を交えてご紹介と、塾への想いを語っていただきました。
山田さんからは『原野から』の紹介と、執筆・制作にあたる安藤さんをずっと傍らで見て、サポートしてきた想いを語っていただきました。

山本浩史さん 山田佳奈さん

 

撮影秘話 ―― 情熱が試される瞬間

安藤さんの講演は、『原野から』の表紙のクマについてのお話から始まりました。
近代日本において危険な動物と刷り込まれてしまっているクマの、愛すべき本当の姿を伝えていきたいという表紙に込めた思い。

『原野から』特大ポスターは、速水諄一さんがご厚意で制作くださったもの

 

ツルやフクロウ、キツネの一瞬を捉えた1枚の写真が、どのように撮られたか、1枚1枚のストーリーが語られました。
「不利な条件の時こそ、本当のプロフェッショナルの魂とか、本当の情熱が試される瞬間なのです」

白樺の林が湖面に映りシンメトリーになった美しい緑の写真では、白樺が森を形成する時にスターターの役割を担っていること、そしてその役割が終わった時に潔く倒れて次世代に譲っていくことにまで深く踏み込んでお話しいただきました。時間軸に添った森の変化を捉え、伝えてくださる安藤さんの広い視野と深みあるお話に、参加者は聞き入っていました。

映像作品「Pass the Winter」では、東北海道の冬を生き抜く動物たちの姿が、ケルティック音楽とともに映し出されました。放映後、1シーン1シーンについてその背景が語られていきました。

 

お金で買えないものを自慢する

「お金で買えるものは自慢にならないし、憧れないほうがいい。
オートバイはお金で買えます。しかし、オートバイを乗りこなすスキルや経験はお金で買えません。かっこいいのはどちらか? 所有することではなく、そのオートバイを自在に操ることのほうがはるかにかっこいいし、価値がある。
自然というのはお金で買えません。お金で買えないものは一度壊すと、復元が非常に難しいです。復元が難しいからこそ、守らなければならない」

「僕の夢は、北海道知事をガイドして、北海道の素晴らしさ、価値を行政や国に理解してもらって日本中にひろめられたらなと思っています。きっとそれは夢物語でなく、実際に今JALさんやANAさんと『人を幸せにしよう』という概念で仕事ができています。
これからみんなで幸せになっていくということはそんなに難しいことではなく、意識の持ち方で、それを実践するということにかかっていると思っています。
もう一度言います。お金で買えないことを自慢する、ということをやっていきましょう」

安藤さんが16歳で手に入れた自転車で500kmを走破する、まさに「お金で買えない」貴重な体験をまとめた映像作品が放映されました。

「実践する、やり続けることが、いろいろな人を勇気づけて、信頼につながると思っています」

そして、2022年版の映像作品「Ordinary Miracle」の放映をもって、講演を締めくくられました。

自然の大きさ美しさ、動物たちのいのちの輝きが伝わってくる写真の数々。安藤さんのご講演から、その1枚1枚の背景に豊かなストーリーが流れていることが感じられました。

以下に参加者の感想の一部をご紹介いたします。

 

≪参加者の感想≫

●東京 学生 19歳 女性
安藤さんの自然界を写真で切り取る瞬間へ真摯に向き合う在り方に、武道や人間関係にも通じるものを感じました。
厳しい北の大地を通じて生まれた出会いやお金に換えられない経験など、自然が教えてくれる謙虚で晴れやかな気持ちを大切に、『原野から』に掲載されている写真を見て、今回の縁を心に残していきたいと思いました。

●東京 会社員 50歳 男性
昨年の講演会からあっとい間の一年だったように思います。
今年もまた安藤さんのお話を直接聞かせていただくことができて本当に良かったと思います。
信頼とは継続だ、その本質は“ペイシェント”耐えて待つというお話が印象に残りました。耐えて待ち、心で観ること。それが「先(せん)をとる」こと。まさに武道につながることを感じました。安藤さんが侍として見えました。
また、目に見えないものを感じること、気配を感じること、そこの部分を自分自身も磨いていきたいと思いました。

●東京 60代 女性
去年はリモートで、今年は会場で、直に安藤さんの気を大いに感じながら楽しみました。
いつかヒッコリーに行ってみたい!! 強く思いました。
ありがとうございました!

●東京 女性
すばらしい講演でした。映像にも感動しました。
心に残る言葉をたくさんいただき、感謝しています。ありがとうございました。

●東京 会社員 60歳 女性
安藤さんの魅力を充分に満喫した貴重なひとときでした。
写真、映像はもちろん、そこにある哲学に多くの参加者が魅了されていました。
今後もこのような機会が続いていかれますよう祈念いたします。ありがとうございました。

●東京 教員 66歳 男性
今日は勇気と元気をいただき、ありがとうございました。
安藤さんにとって、自然(人間も含む)は恋人なのだなと思いました。まるで大好きな人が遠くからやってくるように耐えながら待っている。出会った瞬間の喜び、感謝、それがとても感じられて、私も楽しくなりました。人生を楽しんでいらっしゃる、達人ですね。

●神奈川 会社員 64歳 女性
楽しいお話を聞けました。
日本という素晴らしい国に生まれ、この国を愛し続け、人と出会い元気で生き続けたいと思います。
そんな勇気をいただきました。

●神奈川 会社員 57歳 女性
「お金で買えないものを自慢する」がとても印象に残りました。
モノだけに頼らず、モノを使って素晴らしい経験につなげていきたいと思います。本日はありがとうございました。

●神奈川 主婦 73歳 女性
毎回、安藤さんの講演は魅力的で、自然のことや生きる指針など私の年齢でもためになります。
安藤さんを5年前に紹介してくださった方に感謝。そして安藤さんもそろそろ還暦をお迎えとのこと、これからも健康で Japan tour を続けてくださいませ!
本日は動画で、最新版や自転車500km宗谷岬までを続けられた皆様の姿を拝見したり、胸が一杯になることばかり。お話と映像とで興味深い講演会でした。ありがとうございました。

●神奈川 クライミングインストラクター 61歳 女性
毎回なのですが、自然への動物への、そして人への安藤さんのあふれる愛を感じて感動するとともに、そても幸せな気持ちになりました。
信頼とは継続である。本当にそう思います!
出会いを大切にし、それを信頼につないでいく。
「心」への価値観のパラダイムシフトを信じて、行動に移していこうと思います。
本当に素敵な講演をありがとうございました!

●宮城 医師 70代 男性
講演会は安藤さんのお人柄のとおり和やかで楽しいものだった。
プロカメラマンとしてまたアドベンチャーツーリズムの草分けとしての矜持を随所に入れながら、美しい映像と音楽でお話をされました。心が癒やされ、エネルギーをいただき元気になれました。
北海道の原野で繰り広げられている植物や動物のたくましい生命力とその美しさをたっぷり味あわせていただけて感動でした。本物を継続していくこと、見えない時間軸を大切にすること、自然の中で忍耐強くピントを心で合わせること、自然の本質を見抜いたアイヌ文化の素晴らしさなどたくさんのことを教えていただきました。自然は真実・本物そのものであり、人間の都合で自然を見る視点から、自然と調和し自然に感謝し自然の本質に従う視点になることの大切さを再認識しました。本当に素晴らしい講演会をありがとうございました。ご準備いただいたスタッフの皆さん、どう出版の方々に深謝致します。

 

安藤誠著
『原野から』   『日常の奇跡』

安藤誠連載
季刊『道』