『道』199号 浦川治造インタビュー 「アイヌ長老(エカシ) 俺の生きざま」
アイヌの長老の浦川治造さんに取材できるというご縁をいただいた当初、おそらく北海道まで行ってお話を伺うことになるのではないかと思っていたのですが、なんとお話を伺う場所は、北海道千葉県君津市のご自宅で、それも縄文竪穴式住居であると知り、びっくりしてしまいました。
興味しんしんで伺った竪穴式住居、本当にありました。住居のなかは、浦川さんの手作りの品が並べられ、住居の真ん中につくられた囲炉裏には火がやさしく焚かれていました。
まず、この場所で縄文竪穴式住居を建てた経緯を、住居の土地を無償で提供した大家さんである斉藤五十二氏にお話をうかがいました。そのお話ひとつからも、ひとなつっこくてやさしくて愛すべき浦川さんの人柄が伝わってきました。
浦川さんは、子どもの頃から家が貧しく小学校二年ですでに一家の働き手として農作業や山仕事など、大人並みに従事してきたと言います。学校に行けなかったことから読み書きもできず、幼少期はもちろん、社会に出てからどれだけ苦労をされたかは想像に難くありません。
しかし浦川さんは、どんな境遇にも決して弱音をはかず、人の二倍、三倍やってきたと言います。そしてどんなことがあっても自分で工夫して切り抜ける。浦川さんは理屈抜きの実力で、自分自身はもちろん、家族や周りの人を守ってこられました。
お話はそんな浦川さんの圧倒的な人間力の魅力にあふれています。そしてその生き様は、アイヌ民族としての誇りだけでなく、本来の人間あり方、生き方を教えてくださるものでした。