「動く船を作ってください」 元神風特攻隊員 浜園重義氏の願い
季刊『道』と誌名変更したばかりの2005年、元神風特攻隊員の浜園重義氏に対談取材をしました。
その時のことが今でも強烈に印象に残っています。
今日、出撃という日の朝、お兄様が一晩かけてたずねてきて、実家のお母様がつくったお団子を届けてくださったそうです。「いらない」という浜園さんにお兄様は、「せっかくお袋がつくったから一口ぐらい食べろ」と。浜園さんが切って食べようとすると、そのお団子にお母さまの指紋がくっくりついている。それを見た浜園さんは、それまで泣いたことなかったけれども、初めて男泣きに泣いたと話されていました。
そのお母様はお母様で、浜園さんの出撃の朝、雨だったそうですが、お庭にござも敷かずに土下座して、お線香を立てて、5時、6時、7時、いや10時になってもそこから動かず、縁側にあげようとしても決してあがろうとせず、そこにずっと雨に打たれながら座り続けていたそうです。
お母様とのお話に涙が止まらず、銃弾をあびて身体に17発もの破片を残しながらも生還した浜園さんの、戦争そのものの壮絶な体験に言葉を失いました。
取材は宇城憲治先生との対談という形でお話を伺わせていただいたのですが、その宇城先生に、浜園さんは、最後にお願いがあると言って次の話をされました。
「動く船を作ってください。動く船。中学生にしろ、高校生にしろ、動かない船を作っても、舵のとりようがない。舵をとるのは、親であり先生であり皆さんである。みな動かない船をつないでいるからにっちもさっちもいかなくなる。舵の効く船を作ってください」と。
エネルギーさえあれば、リーダー、トップの力量次第で、舵を効かせ前に進ませることができるのだと。
人間のエネルギーを、本来の力を引き出す。
そのことは今も『道』の根幹として、大切にしています。
浜園さんのお話は、宇城憲治先生の対談集『大河にコップ一杯の水 第一集』に収録しています。
https://www.dou-shuppan.com/u_taiga/