26 7月

【どう出版 メルマガ】 今、届けたい言葉 〈【対談】 山極壽一 総合地球環境学研究所所長/霊長類学・人類学者 宇城憲治 UK実践塾代表〉

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└◆ どう出版メルマガ  (2024年7月25日)

◆◇ 今、届けたい言葉 ― 最新号『道』より―
◇ 【対談】 山極壽一 総合地球環境学研究所所長/霊長類学・人類学者
◆      宇城憲治 UK実践塾代表

【宇城】
本日は楽しみにしてまいりました。
私は空手と居合をずっとやってきて
武道で取材されることが多かったので、

いつも「武道家ですか」と言われるのですが、
現役時は技術開発と経営に携わってきました。

特にイリジウム衛星携帯電話では電源部門の開発本部長として、
またビデオムービーなどの電源開発などにも携わり、

電源の心臓とも言えるパワーICをアメリカのシリコンバレーで開発、
電源部門の小型化、高速化などをやってきました。

【山極】
そうなんですか。
イリジウム携帯電話はアフリカでも使っていましたよ(笑)。

通信情報技術と武道と
どうつながりがあるのか興味深いですね。

【宇城】
すべての電気製品の起動は電源であり、また通信はまさに
コミュニケーションということになりますが、
情報は途絶えた時、電源は感電や火災という死の危険性があり、

それに対する安全規格が各国の法律で決められていて、
それに合格しなければ許可が下りないほど厳しい。

一方の武術はもともと生と死の中から生まれた術技で、
どちらも「死に直結する」というところでは
一緒ではないかなと思いますね。

また開発技術という仕事は「無から有」を創る世界なので、
開発した物が正しいかどうかの検証の見極めによっては、
市場に出てからのクレームにつながり、

即何億という損害になってきますので、開発品の
「検証のあり方」は非常に大事になってくるわけです。

そういう意味では術技の効用が命取りになる武道と
一緒かなと思いますね。

もちろん昨今のスポーツ的な武道とは違いますが。

先日山極先生の「ゴリラから生き方を学ぶ」という
講演動画を拝見いたしまして、

「勝とうとすることと負けないことは違う」というところなど、
武術の教えに通じていて感動しました。

「勝つ」というのは、真剣勝負であれば相手を殺すということで、
「負け」は自分の死を意味するわけで、
一番いいのは「戦わないこと」で、「戦う前に勝負をつける」
というあり方が江戸時代の剣の究極でもあったのです。

まさにその筆頭が新陰流の柳生石舟斎が編み出した
「無刀取り」という術です。

その兵法を徳川家康が徳川時代の平和への政策の
一方針にしたのです。

先生が講演でお話しされていたゴリラの「負けない」お話と
つながっていて、なるほどなと。

つまり強かったら相手をぼこぼこやったらいいけれど、
ゴリラの世界ではそれをやらずに「守る」というのがあると。

そこに武術に似た世界があると思ったのです。

スポーツでの勝敗は審判による「判定!」で
決まるわけですが、武術の実戦の生と死の狭間では、
「意識」を超えて潜在意識の世界になっているのでは
ないかと思っています。

つまり意識よりはるかに感知の鋭い身心による
深層意識の世界です。

スポーツなどの「意識の世界での勝負」では
事の起こりが遅れるということなのですね。

【山極】
僕はゴリラからいろいろ学びました。
研究するうちにそもそも喧嘩をするというのはどういうことか、
という根本的な疑問にぶつかったのですが、

その回答が「喧嘩をする前よりもいい関係になること」でした。
つまり、それが喧嘩の極意だと。



*  *

40年以上ゴリラ研究に携わり、その第一人者として、
また霊長類学者として、ゴリラ社会のあり方から
人間のあるべき姿を見つめてきた山極壽一先生。

長年の観察研究で気づかされたことは、ゴリラの中に見る、
人との共通祖先の姿にこそ、本来の人間らしさが
あるのではないかということだ。

終わりの見えない戦争や、新たな衝突の危機に晒されている今、
ゴリラが実践する闘いの平和的仲裁のあり方や
相手の立場を尊重する共存の仕組みに学び、人間が忘れつつある
気概、気構えを取り戻すことが急務だと語る。

ゴリラが示す「勝ちをつくらない」生き方と、
江戸時代の剣聖が示し宇城憲治氏が体現する「戦わずして勝つ」
のあり方をベースに、今私たちがかかえる課題について
縦横に語り合っていただいた。

<巻頭対談>
ゴリラに学ぶ喧嘩の極意
― 負けず、勝ちをつくらず、共存する社会 ―

季刊『道』221号
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