17 7月

【どう出版 メルマガ】 今、届けたい言葉 〈≪新刊≫ 金澤泰子著 『愛のきせき』〉

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└◆ どう出版メルマガ  (2024年7月17日)

◆◇ 今、届けたい言葉 ― どう出版の本より ―
◇  ≪新刊≫ 金澤泰子著 『愛のきせき』

こんな大きな火傷をしても
翔子は私には言わなかった。

火傷をしてしばらく(三日ぐらい)
経ってからだろう、家の前まで来て、

お手伝いの人を携帯で呼び出し、
「火傷したの」と見せていた。

私はそれを二階で聞いていて、
大したことはなかったのだろうと思ったのだが、
心配で見に行くと、火脹れが潰れていた。

もうピークは越した火傷なので、
「そっとしておけば体が治してくれるからね、
あまり心配しないで」とよくよく言い聞かせて別れたのだが、

その後、翔子は街の優しいおばあちゃんの所に
訴えに行ったので、おばあちゃんはお医者さんに
連れて行ってくれた。

薬も貰ってきて軟膏を付けたが、
付け過ぎたらしく傷口が荒れてしまったようだ。

私は不安がよぎったのでアイフォンの
フェイスタイム(ビデオ通話)で無理やり
傷口を見せてもらうと、まずいことになっているようだ。

翔子が執拗に左手を隠すので
「とにかく実家に来なさい!」と呼ぶと、
恐る恐る実家に来た。

私は翔子と向かい合って座り、
「どうしてお母様に言わないの」と言うと、
翔子が初めて見せる悲しげな顔
(泣く時は、翔子の顔のパターンがいくつかあるのですが、
この時は今までになく、耐え難い悲しみの様子)で、

赤くした目を瞠って、
眉毛あたりが本当に悲しそうになり、
私を見てハラハラと泣き始めた。

こんな大変なことを、お母様に言わないとは
どういうことなのか、と叱ると翔子は悲しげに手話で
「お母様が好き」「お母様を愛してる」と言う。

この手話には私も共に泣いてしまった。

翔子は母親が心配したり悲しんだりすることに
耐えられないのだ。

決してこれからもマイナスなことを
私に言うことはないだろう。

翔子とはそういう娘なのです。



金澤泰子著 『愛のきせき ― 翔子の魔法 ―』
https://www.dou-shuppan.com/books/kiseki/

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