28 1月

【どう出版 メルマガ】 今、届けたい言葉 〈【対談】辻本雅史 中部大学名誉教授  宇城憲治 UK実践塾代表〉

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└◆ どう出版メルマガ  (2022年1月28日)

◆◇ 今、届けたい言葉 ― 最新号『道』より―
◇ 【対談】辻本雅史 中部大学名誉教授
◆      宇城憲治 UK実践塾代表

【宇城】
私は関西圏から集まった中学校、高校の教員の有志を対象に、
人間の潜在能力を実践実証で“気づかせる、気づく”という
「教師塾」を2年くらいやっているのですが、
今、学校は荒れていますね。

ある高校はクラスの半分が不登校だと言います。
そういうことがなぜ起きるのか。

先生の新刊『江戸の学びと思想家たち』(岩波新書)を読むと
歴史的背景からも学校とは、指導とは、がよく分かります。

ちょうどこのタイミングで、先生の本から今の教育の
課題や今後どうしていったらよいかについて、
三つのテーマで考えてみました。

ご著書で「思想は虚空に突如として湧き上がるものではない、
思想家たちの幼少期における『知のつくられかた』
に着目して、子ども期に何をどのように学んだのか、
その学びの在り方を重視する」とされていますね。
まさにその通りだと思いました。

それと
「明治時代の教養主義は身体性を伴った『型』が
入る余地はなかった。その結果、江戸時代の知識人の
『型』を今単純に復活することは現実的ではないだろう。
しかし、その型に代わるよりどころは何か。
価値の根拠をどこに求めればよいのか。それが問われている」

とありました。
まさに先生が述べられている「テキストの身体化」
という型の存在について。

そして三つ目が「近代の終焉の知の行方。学校の機能不全。
学校が培ってきた近代の知そのものがすでに歴史的に
不適合を起こしていることを示唆しているのではないか」
という点です。

【辻本】
そうですね。今の学校教育はもう時代に
合わなくなってきていると私は考えています。

私は歴史研究者ですから、歴史的にものを見る習慣があります。
また江戸時代が専門ですから、江戸時代の側からものを
考える癖があり、その時に新たに見えてくるものがあります。

私たちは、子どもの頃から学校へ行くのが当たり前だと
思っていますし、行かないほうがむしろおかしいと
思いがちですね。

ですから「なぜ学校へ行かない子がいるのか」
「なぜ学級崩壊になるの」という疑問を持ってしまいます。

しかし歴史的に言えば、この今の「学校教育」のシステムが
できてからまだ100年ちょっとしか経っていないのです。

実際、近代の学制は1872(明治5)年に始まりましたから、
150年ほど経っているのですが、すぐに学校教育が
普及したわけではありません。

誰もが当たり前に学校に行くようになったのは、義務教育が
無償化された1900(明治33)年頃からなので、
実際はまだ100年ちょっとしか経っていないのです。

長い日本の歴史のなかで、100年ちょっと前まで
学校へ行かないのがむしろ普通だったと考えたら、
今の学校教育が当たり前だと思う理由は、
ひとつもないのです。

むしろ人類の長い長い歴史から見た時に、私に言わせれば、
明治以降の100年余りは、ちょっと異常な時代、むしろ
例外的な時代だったように思われて仕方ありません。

ではどうすればよいのか。



*  *

長年、日本近世思想、とりわけ江戸時代の教育や
思想文化を歴史的な観点から研究し、
今の教育や社会に対し新しい視点を投げかけている
辻本雅史教授。

辻本教授は、今の学校教育の在り方はすでに
時代遅れだと指摘すします。

江戸時代側から眺めると、教育分野だけでなく、
人間の捉え方のスケールの違いが、今の社会や
学校教育の行き詰まりに繋がっていることが
浮かび上がってきます。

辻本教授には江戸時代の思想や文化の視点から、
宇城氏には時代が生んだ武術の極意「戦わずして勝つ」の
在り方から、

今何を失い、何を取り戻し、何を考え直していくべきなのか、
忌憚なく語り合っていただきました。

<巻頭対談>
江戸に見る豊かな人間教育
今こそ身体の学びを子どもたちへ

季刊『道』211号
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