実践哲学を後世に残す
以下は、『宇城空手』発刊にあたってです。
なぜこの本を発刊したのかの思いを綴っています。
■ 発刊にあたって
本書は、『武道の原点』(二〇〇〇年)、『武術空手の知と実践』(二〇〇一年)、『武術空手への道』(二〇〇三年)の三冊を再編集の上、一つにまとめ、著者の宇城憲治氏に加筆、推敲いただいたものです。
すでに『武道の原点』発刊から二十年の歳月が経っていますが、実は、『武道の原点』には、当時弊社が発行していた季刊誌『合気ニュース』(季刊『道』の前身)に掲載された一九九三年の記事も含まれているので、正確には二〇〇〇年よりさらに七年も前の発信だったことになります。
この三冊は発売当初から、あらゆる流儀・会派の空手道修業者のみでなく、他武道の修業者や、武道経験のない一般の方々にも熱心に読まれてきました。
それは、その内容には、一流儀・会派の内容にとどまらず、本来の武術とは何か、師とは何か、修業とは何か、すなわちその本質が、実践をベースにした理論で展開されているだけでなく、企業のトップとして、またエレクトロニクス分野における最先端の技術者として、第一線で活躍してきた氏の、幅広い経験と視野からくる、日常のあり方、人としてのあり方、リーダーとしてのあり方、ひいては人間どう生きるべきかにつながる「実践哲学」が貫かれていたからです。 本書で展開されている、稽古のフィードバックシステムや上達の非可逆プロセスなどのコンセプトは、長年電源開発にたずさわってきた技術者としての氏の誠実な姿勢からくる独自のものです。それは、とくに電源設計においては、感電は人の死につながるということで「人命の保障」、さらに電源のショートは火災につながるということで「財産の保障」、この二つの憲章を片時も忘れてはならないというなかで、「絶対に不良品は出さない。事故を起こしてはならない」という氏の信念が確固としてありました。
それゆえに、ただ伝統を受け継ぐだけでなく、常に自らをあらゆる角度で検証し、昔で言えば生か死かの次元で、今で言えば、いいかげんは許さない、絶対に関わった人を衛るのだという厳しさ、その姿勢を貫いている。驚くのは、そうした覚悟で実践し、また発信されてきた内容は、年月を経た今でも強いメッセージを放ち、全くぶれていないということです。
そうした宇城氏の実践哲学を末永く後世に残していきたいという強い思いとともに、ますます厳しい時代に突入する今の日本において、ぶれずに逃げずに、自分の人生を堂々と生きるための指南書として、一人でも多くの方に読んでいただきたいと願い、本書発刊に至りました。
本書が多くの方々の今を生き抜く原動力になることを願ってやみません。
『武術の実践哲学 宇城空手』
https://www.dou-shuppan.com/books/ushirokarate/
7/31 講演会〈東京〉
https://www.dou-shuppan.com/books/keiko/