03 3月

ネイチャーガイド 安藤誠さんの思い「クマも私たちと同じ、一生懸命生きている」

昨年11月に、写真家で自然プロガイドの安藤誠さんの講演会を東京町田で開催しました。
その時、日本熊森協会顧問でもある安藤さんが、クマのお話をたくさんしてくださいました。

よく報道で、あちこちでクマが出現して、地域住民に脅威を与えているといったニュースが流されていて、クマが住宅地を歩いている姿や、檻に捕まった姿が放映されたりしています。

安藤さんは、報道されたクマの様子を映像で流しながら、以下のように語りかけられました。

「今このクマは、食べ物を求めてこういうところに出てきてしまったけれども、いっきなり追いかけられたりしてどれだけ怖い思いをしているか。子供のクマだとしたら、お母さんや仲間を泣きながら必死に探しているかもしれない。そういう想像を、私たちはしていますか」と。

自伝エッセイ『日常の奇跡』でも安藤さんは、

「クマの研究によると、10歳くらいのクマだと人間の4~5歳くらいの知能を持っている。もし自分が罠にかかって檻に入ってしまったら、死の恐怖におびえているでしょう。そしてもし母クマだったとしたら、子どもと離れてどれだけ不安に思っているだろうか。つまりクマも人となんら変わりないのだということ、私たちと同じように一生懸命生きているのだということ。そのことに対する想像力が欠如している人は、何事も目先のことしか考えられない人ではないか」と語っておられます。

本当にその通りだなと思いました。

クマと同じように、自然界の生き物である私たちが、自分たちの目線だけでものを見るのではなく、想像力を働かせて、人間であろうが動物であろうが、相手の立場に立ってものごとを見ていくあり方、その大切さを教えられました。

幼い頃からクマにみせられ、いつかクマたちが棲む森を守る森林警備隊になりたいと夢見ておられた安藤さん。
安藤さんが語りそして写真で表現してくださる自然、動物の世界は、ものを見る視点の幅を大きく大きく広げてくださいます。

安藤誠著『日常の奇跡 ― 安藤誠の世界 ―』
https://www.dou-shuppan.com/books/ando01/