季刊 『道』 179号 [インタビュー] 写真家 野村哲也
~ 1月24日発売 季刊 『道』 179号より ~
【ロングインタビュー】 写真家 野村哲也
「楽しいか、ワクワクするか」を指針に
地球を飛び歩く写真家 野村哲也氏。
砂漠に芽吹く花々の逞しさ、強さを軸に
日本の若者に問いかける「全力で生きるということ」。
* * *
<ロングインタビュー>
土の中に眠る生命(いのち)
全力で“時”を待つ 砂漠の花のエネルギーを伝えたい
(野村さんのご著書
『世界の四大花園を行く ―― 砂漠が生み出す奇跡』を読んだ時に、
「砂漠」のイメージが一変しました。「砂漠って実は豊かなのだな」と。)
最初にその扉を開いてくれたのは、僕が敬愛する、
ペルーの天野博物館事務局長の阪根博さん(『道』175号に会見掲載)でした。
彼を訪ねてペルーの古道「インカ道」を案内してもらった時に、
「もっと面白いものがあるけど、見る?」と連れていかれたのが、
砂漠の花園でした。僕は砂漠の花園というのは規模的にペルーを
除いたオーストラリア、チリ、南アフリカが三大だろうと思っています。
ただ僕の場合は阪根さんが教えてくれたペルーの花園がなければ
この三大花園に辿り着くことはなかったので、
ペルーを加えて「四大花園」としました。原点だからです。
砂漠の花園の一番の魅力は、やはり生命の美しさというか、
透明感なんですね。
花びらがぞっとするような透明感をもっているんですよ。
それが600km、つまり東京から岡山間の新幹線両脇に、
絨毯のように敷き詰められているのです。圧巻の風景でした……。
最初は花園に目を奪われて、花園の写真ばかり20回くらい撮りに
ペルーに行きました。福音館の『たくさんのふしぎ』という月刊誌に
「砂漠の花園」というテーマで写真を載せることになった時に、
編集長から「これ、砂漠だということがわからないから、
砂漠の風景も撮って来て」と言われました。
砂漠なんて別に見たくもないし嫌だなとしぶしぶ出かけました。
ところが見慣れている花園ではない時の砂漠を見た時に、
そこからもの凄いエネルギーが湧いている気がしました。
その時に初めて「シードバンク(種の銀行)」という言葉の意味を
体感しました。
土を掘ってみると、もの凄い数の種があるわけです。
乾燥しているところなので、この種たちは土の中で10年から
15年も待てるのです。湿度の高い日本だと、
たぶん種は10年も待つことはできないのだと思います。
待っている種は常に準備をしていて、次の世代に
種を残していくために花を咲かせる時を待ちながら生きます。
ひたすら待った種は、霧が出たり雨が降ったりなど、
自分にとって一番良い状態、一番自分にフィットした時だけに
グッ!と出て、花をバコッ!と咲かせて
何十倍の種をザッと砂漠に蒔いていくんですね。
ペルーの花園で15年間、同じ日に定点観測をしているのですが、
1回として同じ花園はありません。
土の中にたぶん層になりながら自分に合うその時を
じっと待っているのです。
(一瞬のチャンスを種は捉えるわけですね。)
そうです。僕はこの“待つ”という、土の中の種のエネルギーに
打たれたんだと思うんです。本当に感動しました。
砂漠の中に、その百倍、千倍、万倍の
母なる種の生命が埋まっている。
そのことが砂漠だったからこそ見えたのです。
本当に見なければならないのは土の中の生命の母体だった。
みんな自分が芽を出す番になるまで準備をしながら
ただひたすら待って、待って、待ち続け、
ようやく大輪の花を咲かせる。
でもそれは人間に「きれい!」と言ってもらうためじゃない。
またすぐに次世代に渡すために種になる。
その「待つ」という力強さ、その花の姿に僕は圧倒されました。
そんな時、「ペルー以上の花園があるぞ」なんて言われたものだから、
それはもう、見ないわけにはいかなくなった。
そしてこの本『世界の四大花園を行く』ができたのです。・・・・
* * *
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