197号 (2018夏)
テーマ 「次世代へ命をつなぐ」
2018年7月23日発売
「アメリカの大学が求めている人間というのは、『今までにない人材』というところだと思うのです。実績、成績はもちろんですが、『この子が20年後どういう人間になるのだろう』というところを見ているような気がしています。
大学側は、裕福かどうかや、人種や出身国、性別、宗教などを一切言い訳にせず、『本当に自信のある子は来なさい』という姿勢なんです」 (アグネス・チャン)
子どもたちが持って生まれた能力を存分に発揮するために、大人ができることは何か。
将来を自由に思い描き、希望を持って生きられる世界を、私たちは約束できるだろうか。
世界に通用する子育て、教育法
母として、教育学博士として
歌手・エッセイスト・教育学博士 アグネス・チャン
アメリカの大学が求めている人間というのは、
「今までにない人材」というところだと思うのです。
実績、成績はもちろんですが、
「この子が20年後どういう人間になるのだろう」
というところを見ているような気がしています。
10代で歌手としてデビューし、国内外で活躍するのみでなく、大学で児童心理学を学び、ユニセフ協会大使としての任務も果たしながら3人の息子を育てあげたアグネス・チャンさん。
アグネスさんは3人の息子をアメリカの名門大学スタンフォード大に合格させたことでも知られているが、自身もスタンフォード大学院に留学し教育学を学ぶなど、教育については高い見識を持つ。
ベストセラーとなった著書『スタンフォード大に三人の息子を合格させた50の教育法』では、「これからの教育は国際基準に合わせないと、世界でも日本でも活躍できない」と語り、従来型の日本の教育法の課題を浮き彫りにした。
今や東京大学でも世界大学ランキングでは46位と過去最低となっている日本。日本の停滞は何が原因なのか。今の日本の教育に欠けているもの、求められているものとは何か。
UK実践塾 宇城憲治氏を聞き手に、実践子育てとこれからの日本の教育について語っていただいた。
ロングインタビュー
子どもたちを被曝から守る それが私たち大人の責任です
科学者として原子力の真実を伝え続ける
工学者・元京都大学原子炉実験所助教 小出裕章
日本での原子力の暴走を許し、福島原発の事故を止めることが
できなかった責任がある私のような大人の世代は、
被曝してもほとんど危険を負わずにすむ。
しかし全く責任がない子どもたちが
被曝の危険を一手に負わされるということになってしまっている。
私は到底そんなことは許せないと思うのです。
2011年3月11日の東日本大震災によって引き起こされた東京電力福島第一原子力発電所の事故は、7年経った今でも収束の見通しはついていない。国と東電は、最長40年で廃炉を完了させることを目指しているが、本当にそれが可能なのか。
歳月とともに事故の記憶が薄れる中、原子力工学の専門家であり、原発について大学在学中から一貫してその危険性を訴え、反原発の活動をしてきた小出裕章氏に、あらためてマスコミが報道しない原発事故の実体について、さらには生涯をかけてきた廃炉への思いについて語っていただいた。
子孫を残せるタネを守り続けるために 私たちができること
野口のタネ・野口種苗研究所 野口 勲
もはや国は食の安心、安全を守ってはくれない。
今、私たち大人は、
命をつなぐタネを子供たちに残していくために、
何ができるのだろうか。
日本の野菜の危機を訴えた『タネが危ない』の著者で野口のタネ店主・野口勲氏に会見取材したのが2年前の186号。その反響は大きく、読者からは「普段食べている野菜の現状を知り衝撃を受けた」「野菜の根源であるタネが危機的状況にあることを多くの人に知ってもらいたい」など、多くの声が寄せられた。
昔ながらのタネを守り続け、現在も幅広く講演や著書でF1種子の危険性を訴え続けている野口氏に、あらためてお話を伺った。
連 載
◆一般社団法人ハニーファーム代表 船橋康貴 連載『ミツバチが教えてくれること』
「スタートラインに立って想うこと」
ミツバチ絶滅の危機は人類滅亡の危機
私たちが生きていくための環境維持に欠かせないミツバチの存在を伝え、守ろうと東奔西走する船橋氏。
その活動の「今」を伝える。
◆金澤泰子 連載『きょうも、いい日』
「失恋をバネに成長する翔子」
ダウン症の書家として活躍し、また生活面でも独り立ちをはじめた娘、翔子さん。その成長の日々を、母金澤泰子氏が綴ります。
母娘の絆に、胸が熱くなります。
◆宇城憲治 連載『気づく気づかせる』
「時空のエネルギーを取り込む『気』― 人間の神秘と可能性 ―」
現在、氏は目に見えないものを目に見える形にするために、「普遍性、再現性、客観性」の実践検証をもって「目に見えないもの」の存在を解き明かす研究を先行させている。
◆茨城ダルク代表 岩井喜代仁 連載『今日一日を生きる』
「必要とされていれば、何があってもダルクは潰れない ―― 秋田ダルク開設」
薬物依存者が社会復帰を目指すリハビリ施設として、薬物依存回復の確立した方法論を持つダルク。まだまだ課題はあるものの、行政との連携も進み、認知度も高くなった。それは、全国にダルクの数が増えたことも大きく影響しているだろう。
ダルクと出合って26年、自らも薬物依存回復の道を歩みながら、一人でも多くの仲間の回復を求めて各地にダルクを開設してきた岩井喜代仁氏に、各施設の開設と現在に至る道のりを聞くとともに、施設責任者の手記を紹介する。
◆作家 山元加津子 連載『ありのままの私たち』
「天からもらった仕事は“自分自身”」
人と違っていても、障がいがあっても、人はみな素晴らしい力を持っている。
植物も動物も人間も、みんなでひとつの命を一緒に生きている――。
長く特別支援学校で子供たちと接してきた山元加津子さんが伝える、生きる上で大切なこと。
◆編集部コラム 『心の奥の取材ノート』
「最後の零戦パイロット 原田要さんのこと」
交わした言葉、ちょっとした仕草、振る舞い ――
今もありありと思い出す、取材で出会った人たちの思い出を綴ります。