185号 (2015夏)
テーマ 「人間力を取り戻す」
2015年7月22日発売
「『いのち』の目線に立てば、『水』『空気』『食べるもの』そして『太陽』。
この4つのうちひとつが欠けても私たちは生きていけません。
それなのに、私たちを乗せてくれている惑星地球号は、今、
大変な問題を4つすべてに抱えている。
それは私たちの営みが結果として生み出してしまったものですね。」
今地球上に起こっている様々な課題を乗り越える鍵は人間力にある。
早急に求められていることは、私たち人間が母なる大地としっかりつながり、ぶれない、びびらない、裏切らない、本来の人間としての本質を取り戻すこと。
今回示されたのは、そのための進むべき方向と希望です。
巻 頭 対 談
地球といのちを守るために
人間の可能性を開花させ未来を創る
NPO法人 ガイア・イニシアティブ 代表 野中ともよ VS UK実践塾代表 宇城憲治
今、日本だけでなく地球全体が直面する
あらゆる課題に対する答え、
それは人間力を飛躍的に向上させること。
なぜならすべての課題の根底に関わっているのが
我々人間だからだ。
その人間力アップの画期的な仕組みを編み出し実践しているのが、エレクトロニクス開発技術者としてまた企業トップとして長年活躍し、現在は気による人間の潜在能力の開発に取り組む宇城憲治氏だ。
今回その宇城氏と対談したのが、長年ニュースキャスターとして活躍したのち、多くの国の審議会や企業経営にも携わってきた野中ともよさん。現在はNPO「ガイア・イニシアティブ」の代表として、地球存続のために国際的視野で活動し、さらに「子どもたちが笑顔でいられる地球創り」のために、「いのちの価値軸」で様々な活動を展開中。
地球といのちを守るには、人間のなかにある可能性に気づき、開花させること。未来は見るものではなく、自分たちの手で創るもの ―― 二人の熱い語らいは、地球規模的な課題に対し、重大なヒントをもたらすものとなった。
ロングインタビュー
山地酪農が教えてくれること
真実を見極めれば見えてくる、日本の未来
山地酪農家 中洞 正
私は日本に徴兵制でなくて徴農制があればいいと思っています。
必ず何年かは第一次産業に従事しなさいとすれば、
将来農家の労働力として見込める。
健全な国民の育成と農業の再生につながる。
「俺には山地酪農がある!」
この信念があったから
ぶれなかったと思います。
狭い牛舎で牛を飼う密飼いが常識の日本の酪農界にあって、山地酪農家の中洞正さんは、牛たちを広い山に24時間365日周年昼夜放牧し、そこにある草や木の葉を自由に食べさせ、健康な牛の育成を目指してきた。
そのあり方は、まさに酪農業界の自然農法であり、荒廃する日本の山の再生・保存への道にもつながっているという。
「真実がどこにあるかを見極める力をもつことが大切」
経済原理、科学信仰によって押しつけられた〝常識〟を、ぶれない信念ではねのけてきた中洞さん。その生き方は、そのまま今の日本をどう生きるかの、私たちへの強烈な問いかけともなっている。
被災地の今
木碑で伝える大津波の記憶 地域で守る未来のいのち
岩手県大槌町 吉田優作/小國忠義
昭和三陸津波の石碑を見た時に、
「なんで自分たちはこれを教訓にできなかったんだろう」と思ったんです。
どんなに碑に思いを込めても、誰も見ないのではただの建造物です。
こういうものは建てただけじゃ駄目なんだと。(吉田)
「大きな地震が来たら戻らず高台へ」
この言葉を刻んだ幅16センチの木の柱が、3・11の大津波で甚大な被害を受けた集落に立っている。
失われた多くの命。突然大切な人を奪われた悲しみを二度と繰り返すまいと立ち上がった「復興木碑プロジェクト」。
あえて傷み朽ちていく木に教訓を刻み、4年に1度建て替えの手間をかけることで確実に大津波の記憶を伝えていこうというものだ。
このプロジェクトを推し進めたのは当時高校生だった吉田優作さんだ。地震と津波は将来必ず来る。
その時、人々が自分たちのような犠牲を出さないためにはどうしたらいいだろうか?
―― 「木碑」というアイディアを得て、実現のために地域の人々を巻き込んでいく高校生の姿、そしてそれに応える大人たちの姿に、「心の復興」という希望が見える。
プロジェクトの中心となった吉田さんと、碑が立つ岩手県大槌町安渡古学校地区の小國忠義さんに話を聞いた。
連 載
◆伊藤忠商事理事 木暮浩明 連載『うつくし、日本』
機転力 ―武道による反射神経―
日本を代表する総合商社の商社マンとして、イギリス、アメリカ、東欧、中近東、
通算17年間の駐在経験のある木暮氏が語る、日本人とは。真の国際人とは。